二十四の瞳 (新潮文庫)
木下惠介が映画化した「二十四の瞳」を見て、どうしても子供たちについての更なるエピソードが知りたいと思い、
作品の拾い読みをしようと思い購入した。
読み始めると、素晴らしい作品で拾い読みなど到底できず、一気に読み通してしまった。
話は全く同じなのに、木下版「二十四の瞳」と原作は全く別物である点にまず驚いた。
他の人のレビューにあるように、木下版では、一生の儚さを僕は強く感じた。
映画を見ながら、心のどこかでは『Row Row Row Your Boat』の歌詞が頭の中で流れていた。
そして、だからこそ、子供たちに愛おしさを感じた。
同時に、大石先生の教師としての人柄等については、いい人のイメージが、
巧妙に造形されていると感じられたのも事実だ。
小説版ではどうだろうか。
作者自身が、貧困の中で喘ぎ、プロレタリアートの作家の妻として、また本人もプロレタリアートの作家として、
戦争中の弾圧を生き抜けた、嘘のない筋金入りのアナーキストなのである。
そして、写真で見ると、不思議な事に、そんな苦労を感じさせない、優しい笑顔の似合う芯の強そうな明治の女性である。
作者の分身である大石先生は、小説の中では、子供たちに大きな大きな優しさを持って接し、
作品の7章、8章で語られるように、教え子たちが幸せになれないことに、大きく心を痛めて、
時に、貧困や、戦争や、それらを創りだしていった時代や、システムに対して大きな怒りを爆発させるのだ。
原作には、大石先生の人柄についての巧妙さ、狡猾さは全くない。
作品を読んでいて、がっかりさせられる事の一つは、作為的なものや嘘っぽさが、一瞬でも作品の中から
垣間見えてしまうことだと思うが、それが、この作品には全くないのだ。
これが、この作品の魅力の一つであり、それを成し遂げられたのは、
あの戦争中を、転向せずに、駆け抜けた作者の強さがあるからだと思う。
そして、小説版でも感じたのは、やはり反戦と言う言葉でくくれないもの、
子供たちへの大きな愛と、優しさ、そして多くの子供達が平等に幸せになれない事への
悲しみ。そんなものを強く感じ、どうして反戦文学という言葉でこの作品を語る人が多いのかよくわからなかった。
小説を読むのは、いろいろな個性との出会いであり、作家との静かな対話を楽しむことだなと、
この頃つくづく思うのだが、こんなに慈愛と強さに満ちていて、しかも、自分に素直な作家の作品を
他に心に浮かべろといっても全く浮かんでこない。
本当の悲しみと苦労を知っているもののみが到達しうる、壺井栄という女性にしか描けない素晴らし世界
に誘ってくれている。こんな小説を読んだ後は、読書っていいなとつくづく感じさせられた。
今回、遅まきながらであるが、私は、久しぶりに作品に、そして作家に、一目惚れしてしまった。
当然、壷井氏の作品を他にも読みたいなと思ったのであるが、残念なことに
代表作がほとんど手にはいらないのである。
新潮文庫には、もう一作でも良いから、作者の代表作を入れてもらいたいなと感じた。
母のない子と子のない母と (小学館文庫―新撰クラシックス)
「二十四の瞳」の壺井栄さんの素晴らしい作品です。物語の舞台が私の生まれ育った郷土の環境に似ていることもあり、深い人間愛や愚かで痛ましい戦争について考えさせられるこの物語がより現実味をもって感じられました。多くの子供たち、そして大人たちに読んでほしい名作です。
二十四の瞳 デジタルリマスター2007 [DVD]
教師は、沢山の子の成長に立ち会える、貧乏だったり、裕福だったり、それぞれの夢を追ったり、家庭の事情で夢を諦めなくてはならなかったり、人生途中で死んでしまったり。小さな子ども達の成長や悩みに介在すると言う意味では、ある意味親と子の関係、しかし、やはり先生と教え子という他人の関係ゆえ、先生ができる事、してあげられることも限られている。そして戦争と言う状況下では、沢山の教え子の死に向き合わねばならない。二十四の澄んだ瞳の輝きを濁らせたくないという思いと、一方でどうにもならない他人の人生。この映画はどうにもならない他人の人生に、関われること、成長に立ち会えることの素晴らしさを教えてくれます。是非いろいろな人に見ていただきたい映画ですし、特に小学校の先生になる方には見ていただきたい映画です。これを見て先生になるような人が増えれば、日本も変わるのではないか、、。とも思ったりいたします。傑作です。
二十四の瞳 (角川文庫)
「なんだこれは。ここで描かれている日本は、
本当にほんの数十年前の現実か。
オレのおじいちゃんおばあちゃん達が生きた時代なのか」
そう考えると妙にリアルで、心に響きました。
登場人物たちの純朴さが、さらに物語を悲しくしていました。
教室で無邪気にはしゃいでいた少年少女にとって
唯一無二の未来が当時の国際情勢の現実によって決められる。
受け入れる筋合いのない“運命”を無理矢理受け入れさせられ、
そんな中でも必死に生きる彼らの様子。
「こんなにも簡単に人々の暮らしは壊されてしまうものなのか」
と思うととても怖くなりました。国が暴走するって本当に怖いですね。
“何でもあり”になりつつある時代に生きる僕たち。
それに比べて、自分を抑えて生きていた昔の人たち。
だってそれが美徳とされていた時代でしょ?ってわかっていても、
やっぱりひたむきに生きる人間の姿は尊ぶべきものだと思います。
やたらと過去を振り返るのは嫌いですが、
こういう作品って現代日本に生きる僕たちにとって
かけがえの無い財産だと思います。
終戦60年特別ドラマ 二十四の瞳 [DVD]
タイトルにも書いたのですが、旬君目当て観たのですが、自然に初めから涙、涙でした。
今、平和ボケしている日本人に観て欲しい、一本です(私も含めて)
もちろん小栗旬君も良かったです。ファンだからいうのではなく?!?