雪に願うこと プレミアム・エディション [DVD]
切ない映画ですが、見終わった後は、何か希望のようなものを感じさせます。
佐藤浩市が非常に良いです。
伊勢谷友介演じる主人公の最初救い難い浮き加減に対し、徐々にばんえい競馬の現実を含んで見せるシーンが、お気に入りです。
小泉今日子の「女を感じさせる賄いのオバちゃん」ぶりも良いです。
でも、この映画の本当の主役は「ウンリュウ」号でしょう。
「ウンリュウ」号からは物言わずとも定めとして走る、という使命感と説得力が充分に感じられ、ばん馬としての宿命を感じます。
不覚にもラストシーンで泣いてしまいました。
みんな一所懸命生きているんだと改めて感慨に耽る、日本映画の秀作です。
DISTANCE(ディスタンス) [DVD]
よくもまあこんな売れなそうな傑作をこの時期に創ったもんだと、是枝監督の挑戦根性には敬服しました。カルト教団(もちろん本人たちにそういう意識はないんだろうが...)の団員の入団の前後、そして集団自決の前後、さらにその遺族(被害者家族と加害者家族)の前後がしんしんと折り重なり、そこには静寂と絶対譲れない怒りが存在し、まさに満場一致で解決出来ない人々の一番真剣な部分の、時に静か時に激しいブツかり合いが主題です。感心したのは、当初はどうせ遺族の悲しみにのみスポットライトが当たっているものと思い込んでいたのですが、むしろ主題にされているのは信者たちの無垢な真面目さ。白や黒で語れる問題ではないということがひしひしと伝わってまいります。
「幻の光」でも感じたことだが、是枝監督の作風は非常にヴェンダースのそれに近いものではないかと思われます。それは監督がヴェンダースファンだということではなく、きっとヴェンダース同様タルコフスキーや小津映画から多くを学んだのでしょう。とにかく静か。だから意味深な静寂にあまり興味のない人には酷な作品だと思います。
DVDの編集の出来としてはマズ本編があって、字幕は英語だけ入ってて、トレイラーといくらかの特典映像が挿入されているのですが、私見では同年代としてARATAと伊勢谷友介のぶらり旅映像が面白かったです。カラッカラっとした伊勢谷友介とノッタリしたARATAの生み出す不思議な空気が、なんだかとっても心地良くて、是枝監督の青年の演出の仕方の腕前にも驚きでした。さらにトレイラーの最後に、出演者みんなで「DISTANCE」ってボヤくところがえらくカッコよくて、何度も何度も巻き戻してマネしちゃいました。ああいう節々に散りばめられた小さなアイディアがいかにもモダンで質の高い監督の特性です。
DISTANCE(ディスタンス) [VHS]
分かり合えないんだなあと違和感だけが残ります。
でも、映画の中の人たちは考える。それはなぜか。分かろうとするためにです。
それから浅野の演技はやっぱりすごいです。浅野がいるから、伊勢谷みたいな演技が許されるようになったからという意味で、第一人者だと思う。