シゴフミ〈4〉Stories of Last Letter (電撃文庫)
堂々のフィナーレと事のすべての始まり、そしてひとつの終わりまでを集めた珠玉の最終巻。
そしてあとがきにて明らかになる「シゴフミメディアミックス企画」の全容*1。
小説・アニメ双方を併せることでひとつの物語として繋がる作品になっていました。
無論、小説だけでも一個の作品として完成はしています。
最終巻となる今回は、配達人としての文伽が主役となるエピソードとそうではないものが入り混じっています。
前回の3巻でもトリのエピソードとエピローグが別の配達人─沙音─を描いたものでしたが、今回もそういったエピソードが含まれています。
ただ、今回のそれに関しては3巻の時と違い文伽の関与・登場が一切ないわけではなく、配達人になる前の彼女が物語に出てきています。
そういった形式を取り、生前の彼女と沙音という配達人(更に言えばアニメのフミカ)、そして配達人となった文伽をつなぎ受け継がれる想いが描かれています。
そして、シゴフミは確かに奇跡だが、時にはシゴフミが原因となり悲劇を招くことがあるという悲しい現実がある。
けれどシゴフミはただの現象でしかなく、本当に奇跡を呼び起こすのはそれを差し出す人と受け取る人。
だからシゴフミは、決してこの世にあってはならないものなどでは…ない。
と、この作品の世界観と根源的設定に対して“答え”が明示されたとても良いラストを迎えています。
短すぎず長すぎず、後から手を出すのにも程良い4冊の本に収められたシゴフミのストーリーに是非触れてみて下さい。
シゴフミ〈2〉Stories of Last Letter (電撃文庫)
本作は、死者が生者に遺した手紙を配達する少女─文伽─の物語。
しかし物語の中心は、各エピソードだけに登場する人たちであって文伽ではありません。
今回の主役は「消防士」「猫」「女子高生」
最初の話は、父も兄も消防士ゆえに成り行きで自分も消防士になったものの意気込みや意欲の湧かない新米消防士のお話。
この話では、今までとは一風変わった形で“シゴフミ(=死後文)”が関わってきます。
具体的にはこれまでの友人知人に想いが遺されるケースではなく、火災による死者から消防士へ“お願い”としてシゴフミが届けられます。
そしてその手紙を受け惨事を防ぎ、新米が“ヒーロー”となる物語ですが…。
二番目は車に轢かれて死んでしまった猫が、その成長を見届けないまま遺してしまったちびっ子飼い主に想いを届けるお話。
これもまた変化球な話でして、ぶっちゃけシゴフミは何の役にも立ってませんし文伽の関与もなく、マヤマが物語に関わってきます。
良かれと思っての親切は時に思い通りの結果を生まないこともあるけれど、それでもきっと「間違いではない」そんな思いが浮かぶ話ですね。
そういえばこの話では、何といつも規則にうるさいマヤマの方が規則を破りますが、この話を含め2巻では文伽は逆にこれと言った逸脱行為やスケジュールの遅延もなく、無難に仕事をしていたのが意外といえば意外です。
最後は淡い恋物語の体裁です。
あまり詳細に書いてしまうとネタバレになってくるので差し控えますが、自分そっちのけで校内の男女の縁結び(=キューピッド)に奔走していたコが、ある人からの“シゴフミ”をきっかけに気持ちのけじめと決意を固めるといった感じの話でしょうか。
ラストは「あぁ、そっちを取るのか…」と少し意外性の趣きもありました。
総じて今回は、1巻以上に心にじんわり来る充実したストーリーばかりになっていたように感じられましたねー。
EMOTION the Best シゴフミ DVD-BOX
殺人、いじめ、虐待。辛い人間の暗部。一部分だけを見ればその部分が強調されているかのように感じられる作品。しかし、それだけにとどまらない強く優しい包容力に満ちた力作です。
死後の世界へ旅立った人から現世に残る知人へと届く最後の手紙「死後文」の配達人フミカをめぐる騒動。ぶっきらぼうだが、どこか寂しげで、真面目で、本当は思いやりのあるフミカの周りに集まってくる奇妙な縁で結ばれた友人たち。フミカと同じ「死後文」配達人でニヒルを決めこんではいるものの実は純粋で優しいチアキ、フミカの過去を知る誠実で思慮深い少年要、要に密かに思いをよせる元気で前向きな少女夏香、マイペースで大胆な夏香の姉春乃。主人公を囲む登場人物らのフミカのことを思いやるがゆえのひたむきさと温かな存在感がこの作品に前向きな力を与えています。
辛いこと、嬉しいこと、人の心のうちの全てを「死後文」配達人として嫌というほど見てきたフミカ。彼女自身も自分が自分であるために己の過去と向き合おうとします。はたしてフミカの壮絶な過去とは?そして彼女はなぜ「死後文」配達人となったのか?そもそも「死後文」配達人とは何者なのか?そのあたりの謎解きも観る者を惹きつけること請け合い。
一話ずつなかば完結しているかのような構成ですが、実は一つ一つの話が積み重なって大きな潮流になっていくあたりが素晴らしい。どのキャラクターも実に丁寧に描かれていることが物語に厚みを加えています。
人生につきものの辛さも、勇気の源泉である温かい善意も、すべて心に染み入ってくる、これはファンタジーアニメの心に残る名作です。決して底抜けに明るくはない、しかしあえて暗部から目を逸らさず直視することによって前向きで心強い希望をしっかとテーマに据えることに成功した好例です。
シゴフミ オリジナルサウンドトラック
『シゴフミ』のOPとEDを含む全29曲。
このサントラは明るい曲満載とは言えない。
そしてノリがいい訳でもなく淡々と流れる音楽。
だけど空気感というか自然と心地よくなる音楽です。だから明るくはないが存在感があり、素朴で暖かみがある。そもそもなぜここまでおとなしめな曲になったのか。ブックレットにあるこの音楽を作った七瀬光によると「非現実と現実の狭間が淡々と描かれているこの物語に寄り添うように、ストーリーを粛々と進めていけるような音とはミニマルミュージックだった」と語っている。ミニマルは暗い、長い、眠くなるという印象の音楽のことだが、七瀬光は、単純に寂しくなりがちなこの曲をさりげない存在感と聴いてる者への自然な音楽の浸透を意識した曲へと変えた。なので「落ち着く、心地よい、」と私は感じた。ちなみにOPはテレビサイズ、EDはOSTバージョンで収録。
一見パッとしないサントラという印象だが音楽の気持ち良さは確かに感じられた。
シゴフミ 七通目<最終巻> [DVD]
「湯」川淳+大「澤」信博+松倉「友」二+大河内一「楼」=湯澤友楼 原作によるメディアミックス作品のアニメ版もいよいよ最終巻です。
十二話で完結した作品に対するボーナストラック的な扱いで、蛇足といえない事もない。
お話の展開も一転しておとなしく、淡々と進んであっという間に終わり「え、もう?」というのが初見での感想です。
しかし繰り返し観ると、自分にとって全十三話中 一番心に残るエピソードだと感じました。
展開に無理がなく、本編の伏線を上手に織り込んだ本作は、言わば本編へのオマージュのようなものでしょう。
果たしてニセのシゴフミの送り主は?
フミカと文歌のその後とは?
一見の価値はあります。
一話収録ということで価格もお手ごろなので、お一ついかがですか?