ミザリー(特別編) [DVD]
「サイコ」か「ミザリー」かといえば、私は「ミザリー」が一番怖かった。
CGを使わず、怪物や特殊メイクを使わずに、ただただ人間心理に迫る怖さ。ストーカーの怖さ。
淡々としたキャシー・ベイツの演技は最高でオスカーを受賞しました。
世の中で一番怖いものは「人間」でしょうね。演出も見事でした。
ベストセラー作家が、雪の山中で事故にあい、意識が戻ると、彼を助けて看護してくれた、人のよさそうな中年女性の家にいた。彼女の名前はアニー。「ミザリー(小説の中の主人公の名前)」という彼の作品シリーズの大ファンだし、自分は元看護師なので彼の骨折した足が治るまで、喜んで世話をするからということで好意に甘えることになった。
徐々に彼女の恐ろしい内面がわかっていく様が、本当に怖い。この恐怖を体験する役をジェームス・カーン(ゴッドファザーのソニー役)が好演しています。恐怖を感じながらも自分がベッドに横たわったまま、動けない彼の心理状態に見ている側がひきこまれます。まるで、自分がアニーに向き合っているような?
自分が正しいと思うことを受け入れてくれない、否定されていると感じた時のキャシー・ベイツの迫真の演技。物凄いですよ。
なんとか助けを求め、必死に逃げようとする作家を見つけ、アニーの行動は猟奇的になります。
現実にありうることですよ。今の世の中なら。
アニーの精神状態に近い人は、今の日本にもたくさんいるかもしれませんね。
Misery (Signet Shakespeare)
映画で観たことがあったので、原作を読みたいと思って読んでみました。映画ではキャシーベイツが好演し、それはそれは怖かったのですが、原作も映画以上におぞましく怖い話でした。英語はやや難しめですので、英語に自信のない人は映画を観てから読んだ方がわかりやすいと思います。そうすれば映画と原作の違いもわかりますしね。話の展開にぐいぐい引き込まれていくのはさすがスティーブンキングです。へたなホラー小説より怖くておぞましい体験ができます。
ミザリー (文春文庫)
大変残虐。でもそれだけじゃない。
人間の怖さと、狂気と、それに対する嫌悪がよく描かれていて、不思議なことにそれらを少しずつ受容している自分がいる。
作者の狙いだろうけど、まんまとはまってしまった。
最初の50ページで無事もなく生還☆の道がすっかり閉ざされ、絶望に叩き落とされます。怖さと嫌悪感と訳の漢字が読めない(わざわざ異事体で書いたりする)で脱落しそうになりつつ
100ページあたりでやっと主人公のターンになってきて、それからは漢字にひっかかりながらも一気に読みました。
想像力を刺激してくる文で、
まるでアニー(敵)がすぐそばにいるようだし、自分はポールになったような気分になれます。でもこれは恐怖小説なわけでたまに嬉しくないんですけどね…
相当残虐だけど、怖いだけじゃない面白い小説なのでオススメですが、訳の異事体はちょっと嫌でした(笑)勉強になったから☆はひきません。
アウターゾーン 1 (ジャンプコミックス)
この作品がジャンプの後のほうのページにありながらもコミックスで通算して15巻も続いたのは、ひとえに作者の「基本的にはハッピーエンドで物語を終わらせる」という姿勢にあると思う。
確かに読み通してみて気付くのは、最後は「善人が幸せになる」という結末が基本であるということ。
一例を挙げると、男の子が飛び込んだボールを捜して古びた洋館に迷い込むのだが、そこで糸に捕らえられた女の子と出会う。女の子を助けようとする少年だが、謎の女が現れて2人を捕らえようとする。
必死の思いで館を脱出した少年はわれにかえる。館は何処にもなく、少女も女も煙のように消え去っていた。
あれは夢だったのか・・・と思った少年が見付けたのは蜘蛛の巣に引っ掛かってもがいている蝶。
少年が蝶を助けてあげると、蝶は感謝するかのように少年の周りを飛び回って去っていく。
あの館での出来事は囚われた蝶が助かりたい一心で見せた幻だったのだ・・・というラストシーン。
上記の話に作者が自ら「実はラストシーンはもうひとつ考えたものがあった」と明かしている。
それは「少年が館で女に捕らえられ、現実では少年を探しに来た仲間が蜘蛛の巣で蜘蛛に喰われている少年を発見する・・・・・」というものだったらしい。
けれど、そのラストシーンは採用されなかった。作者は続けて書いている。
「そんな(悲惨な)ラストに何の意味があるだろう?」
「自分は読者にそんな思い(後味の悪い気持ち)を抱かせたくはなかった」と。
・・・・この姿勢は作品を通してほぼ貫かれていくのだが、「成功」の要因もそこにあったんだろう。
たまにミザリィの不思議グッズを悪党が手に入れて、悪用したりするのだけれど、最終的にはいずれも例外なく「上手く使いこなすことができず、悲惨な末路を迎える」。
バッドエンドの話もあるのだが、悪い目に遭うのは「悪党のみ」で「善人は悲惨な目に遭うことは基本的になし」。
怒らせると怖い案内人の「ミザリィ」も、悪人には強烈なお仕置きを食らわせても、善人を陥れたりは決してしていない。
このハッピーエンドと、たまに挿入されるバッドエンドの話の比率が「7対3」もしくは「8対2」くらいの印象で、「匙加減」が絶妙だった。
大体の読者は物語は「ハッピーエンド」のほうが好印象を抱く傾向にあるというデータも出ている。
「バッドエンド」のほうが印象は強烈なものとなって心に刻み込まれるものらしい。
ただ、バッドエンドだと読後感は当然良くはならないので、ある程度の批判や悪評も覚悟せねばならないだろう。
漫画に限らず映画でもゲームでもドラマでも制作する側は「この事実」を良く認識して制作をすると、好評を得られる作品を作りやすいのではないかと思う。
この作品は上記を実践して、「実際に成功を収めたモデルケース」と自分は考えています。