昭和を飾った名歌手たち(10)
現在も横浜にある「港が見える丘公園」は平野愛子のヒット曲から名づけられた公園で、いかに当時この曲がヒットしたかを物語るエピソードです。
終戦直後のビクター新人歌手募集に応募し、「長崎物語」を歌って見事新人歌手の座を掴むことが出来ました。彼女の声には艶があり、うっとりとしたムードを聞かせてくれます。このCDには、「月よりの使者」の片面に収められた「夜霧の砂丘」など、ヒット曲のみならず隠れた名曲も収められており、コンビとしてよくステージに立った竹山逸郎とのデュエット曲も収録されてるのも珍しいと思います。ちなみに2曲目でデュエットしている貴島正一は、後に「上海帰りのリル」や「お富さん」「島のブルース」などを作曲した渡久地政信の歌手時代の名前です。
昭和56年に若くして世を去りましたが、今は忘れ形見のお嬢さま、平野淑子さんが、彼女のヒット曲を歌い継いでいます。
少林寺 VS 忍者 [DVD]
これは面白かった!実に爽やかなコメディです。前半はクンフー版「Mr&Mrsスミス」。中国人夫(アタオ。カツラ被って長髪の変なリュー・チャーフィー=ゴードン・リュー)と日本人妻(弓子。懐かしい水野結花)が延々とクンフー対日本武術で戦います。庭をぶち壊し、食器をぶち壊し、最後は暗器まで持ち出しての総力戦。それが夫婦喧嘩だというバカバカしさ。「Mr&Mrsスミス」の数倍面白いです。水野結花の空手もやや硬直ながら決まっています。いかにもわがままで気の強そうな美人顔にも惚れました。
そして後半は、アタオ対日本人武道家7人との1対1の闘い。これも凄い。奇想天外なクンフーや武術が次々と見られます。素晴らしいのは倉田保昭。「蟹拳」というのを見せてくれるのですが、これが本当に蟹みたいに横に動いていくのです。明らかに笑ってしまう動きなのに、ちゃんと武術?に見える凄さ。それに、香港映画ではいつも悪者の日本人も、ここでは正々堂々、立派な武道家として描かれています。「明日行く」と言って、夜中の12時ちょうどに襲うなど、お茶目な点はありますが。闘いも悲惨にならず、途中で「やめた」と言って終わるのがいい。ホントに気持ちいいです。
終わってみればけが人もなし。こんなに爽やかで楽しいクンフー映画もあるんだなあと感心しました。もちろんチャーフィー主演なので、中国人が勝つのですが、けして日本武術もバカにされているわけではなく、何かと摩擦の多い日本と中国ですが、この映画のように仲良くなれればいいですね。見ている間じゅう、ずっと幸せでした。
みんなのいえ [DVD]
三谷幸喜監督の作品は、正直に申し上げて、当たりと外れの振れ幅が割に大きいように感じるが、この作品は、その意味では当たりの部類に入るのではないかと思う。
クスリ、ニヤリといった種類の笑いにも満ちているし、時にはホロリともさせられる。
心温まる人情喜劇、といった趣だ。
最初は、設計を任されたインテリアデザイナーと、大工歴51年のプライドを誇る棟梁それぞれの、「こういう家にしたい!」という自我と自我のぶつかり合いに、どうなることやら、と先が思いやられたが、さまざまな葛藤や、アクシデント、ハプニング等を経る中で、その二者が互いを少しずつ理解し合い、歩み寄っていくさまが、見ていて心地よかった。
各人が個性を発揮しながらも、どこかで折り合いをつけ、共に幸福になる道を見出していく姿に、人生のあり方というものの一つの縮図を見た気がする。
単純に楽しめながらも、意外に(と言ったら何だが)奥行きもある。
見る価値のある、優れた作品だと思う。