反在士の指環 (徳間デュアル文庫)
SF作家【川又千秋】氏の初期の傑作『反在士の鏡』に新たな3章を追加した【完全版】が、この『反在士の指環』です。これがまた大傑作です。妄想を現実として具現化する能力を持つ主人公【反在士ライオン】が、宇宙を支配する二人の超越的ゲーム・プレイヤー【白王】と【紅后】に戦いを挑むという、いわゆる【スペースオペラ/宇宙冒険活劇】に属する物語です。でも、そこはやはり川又千秋氏で、物語は一筋縄では行きません。最初は【幻想的スペースオペラ】と見えた物語が、中盤は【悪夢的不条理小説】と変化し、ラストは【思索的哲学小説】へと変貌して行く展開は、まさに川又千秋氏ならではの独壇場です。原型となった『反在士の鏡』はSFファンには有名な作品ですが、この【完全版】を知っている人は意外に少ないように思います。これもまた川又【幻想SF】を代表する傑作。未読の方には、是非オススメします。面白いですよ。
ロトの紋章 完全版 3 (ヤングガンガンコミックス)
全15巻で刊行された『ロトの紋章 完全版』の第3巻。
表紙は"遊び人"ポロン。収録されているのはLEVEL13-17の5話で、話の内容としてはバラモスゾンビ戦〜テドン〜海王復活、まで。通常版コミックスでは4-5巻収録分に当たります。LEVEL13&15 のカラーページ(各6ページずつ)が雑誌掲載時そのままに収録されています。
連載がスタートしてまだ1年そこそこ、装備も仲間も習得呪文も不十分なアルスのパーティーがドラクエ3のボスであるバラモスと戦う、という展開は連載当時衝撃的でした。ゲーム中のバラモスを比較対象として漫画中のアルスたちの力を計ることができ、彼らの冒険をこれまでより身近に感じたものです。その他前巻で収録されなかった LEVEL 12のカラー扉イラスト(1P…ヤオ)も掲載。
幻詩狩り (創元SF文庫)
日本SFを代表する傑作中の傑作が、ついに待望の復刊です。川又千秋氏と言えば、『反在士の指輪』、『宇宙船メビウス号』2部作、『火星甲殻団』2部作など、忘れがたい名作を大量生産した作家で、今回の復刊は、まさに《待望》という言葉がふさわしい、ちょっとした事件です。SF界における川又氏の評価は少し地味な感じがあるので、今回の復刊をきっかけに、川又千秋再評価ブームが起こったら、ファンとしては最高に嬉しいです。
ラバウル烈風空戦録〈15〉逆攻篇 (C・NOVELS)
この種の本は読者の好みに左右される部分が大きく、誰にでもという本ではありません。ただ私はこの作品の叙事詩的な側面に強く魅せられずっと楽しみにしていました。このシリーズはベルリンの壁の崩壊の前年の1988年の終わりにスタートしており、当初は順調に各巻が出ていたのですが、途中で話が切れたままで終わっているシリーズです。第一巻で、舞台となっているこの戦争の停戦の年は1946年もしくは1947年とすでに規定されているわけですが、この15巻は1945年が舞台となっています。著者はあとがきで最低でもあと3巻の追加を示唆していますけど、その後はまだ一巻も出ていません。なぜなのでしょう?飽きてしまったのでしょうか?それともこれほど長いシリーズを続けて行くためのモティーフの緊張感が保てなくなったせいでしょうか。どんな理由があるにせよ、シリーズの再開を祈っています。
翼に日の丸 上 双戦篇 (角川文庫)
ながらく中断していた「ラバ空」を再構成したもの。完結の運びとなったのは喜ばしいが、端折りすぎという感は否めない。
また、本来の一人称的視点であったものが、その持ち味が失われたのは残念である。