中国最大の弱点、それは水だ! 角川SSC新書 水ビジネスに賭ける日本の戦略 (角川SSC新書)
現在、TPPの問題が語られているが、これを読むと、
そもそもアメリカ自体がいつまで農業大国、農業輸出大国であり続けられるのかさえ、疑問に感じてくる。
それくらい、水の問題は話題になる割には、まだまだ多くの人達に知られていない。
単にイデオロギーからの、反中論、外国資本脅威論ではなく、
客観的に多くの事実関係、統計データ、国際会議の報告レポートに基いて、考えられるのがいい。
衝撃的だったのは、ペットボトル・ビジネスが世界に与える強烈な悪影響、危険だということ。
これは、一度は「エコ」「環境」活動などに熱心な主婦層などにも伝えたい事実である。
手軽に通勤途中などに直ぐに読みやすい新書でもあるので、多くの人に、読まれてほしいと思う。
恐るべきTPPの正体 アメリカの陰謀を暴く
マスコミの情報を見聞きする限り、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に参加しないと自動車や電気製品などで関税の違いで韓国などに差を付けられる、勿論農業分野ではマイナスになるがメリット、デメリットを考えると参加すべきではないかと漫然と思っていた。
しかし、この本を読んでみるとそんな単純ではないことが分った。経済産業省が主張するメリット、農水省が主張するデメリット以外に数々の問題点があることを著者は指摘している。実は医療、福祉、教育、法律、金融、通信など様々な分野でアメリカのスタンダードに従わされてしまう。
急成長を遂げるアジア太平洋地域ではすでに170もの経済協定が締結されているが、その殆どから締め出されているアメリカとしてはTPPは起死回生の戦略なのである。協定の案文はアメリカに極めて有利なものになっている。
しかもこれらの疑問点に対して政府はまともな説明をしていない。正月の福袋を買うわけではないので、中身の分からないTPPに賛成しろと言われても答えようが無い。地方自治体も慎重で2011年1月時点でTPPへの参加について反対あるいは慎重な対応を求める意見書や特別決議を採択した都道府県議会は39都道府県に上っている。
当初のTPPの参加国のニュージーランドではTPPに対する反対の署名活動やデモ行動が頻繁に展開されているが、何故か日本のマスコミでは殆ど報道されていない。日本の郵政民営化のときに「民営化はニュージーランドに学べ」がスローガンになっていたが、その時ニュージーランドでは過激な民営化の失敗を認め、すでに民間に売却していた国のインフラ企業である、航空、鉄道、電力などを再度国有化していた。何でもアメリカ流に自由化、規制緩和をすればよいと言うわけではなく、日本なら日本の国情に合わせた施策が必要である。
TPPに参加する場合にアメリカは日本の遺伝子組み換え作物に関する規制を非関税障壁だと主張する可能性は高い。その場合モンサントのような種子会社に日本の農業が依存せざるを得なくなる可能性がある。TPPは医療、福祉、教育、法律、金融、通信などのサービス分野でも自由化を要求するので、これらの分野でも日本らしさ、日本精神が損われる可能性がある。
政府もマスコミももっと国民に情報を示して十分議論を尽くす余地を与えるべきだと思った
「大恐慌」以後の世界 (光文社ペーパーバックス)
再生紙を使用した軽量な装丁に対して、内容的には極めて重量感のある一冊である。(皮肉ではなく称賛)最初は、週刊誌の記事を読むような気軽な感覚で読み始めたが、読み進めるうちに多くの事実に気付き、考えさせられることも随所にあった。(内容盛り沢山)
行き過ぎた市場原理主義の申し子ともいうべき金融工学を振りかざして、人間の金銭的な欲望の極みを追求したウォール街の投機関係者、それを結果的には側面から支援した日本の低金利政策、ロシアや中国の政治的な意図の強いニューパワーの台頭等、この世の中の事象は複雑に絡み合い、何が原因で何が結果であるかは一言では表現できない。そういうことを広く学ばせてくれる意味でも本書の意義は大きい。
そのようななかで、本文中でも指摘されているように日本に欠けている戦略として食糧とエネルギーの安定確保がある。世界各国がこれを最重要政策に掲げているのに対して、日本の脳天気さには危機感を感じざるを得ない。
一方、金融危機で世界全体が暗い雰囲気で覆われているなか、インドのミタル製鉄の若手後継者のアディチャ氏が言うように、世界にはこれから工業化社会に突入しようとする20億人を超える人口があり、新たなビジネスチャンスがあることも事実である。今回の金融危機の対症療法で各国が発行した大量の紙幣が、将来の大インフレを惹起し、加えて地球規模での異常気象や人口増加による大きな悲劇(戦争も含め)を引き起こさないように英知を注ぎながら、前述の人類的課題の解決(富の普遍化&不偏化)に世界が向かっていく必要があるだろう。
また、米国の会計検査院が事実上の破綻宣言をしたドルがこの先も国際基軸通貨であり続ける可能性は低い。米国が自国通貨のデフォルトを宣言する代わりにルールメーカとして、自らに都合のよい新通貨制度を創設しようとする動き(アメロ)は軍事的、政治的なパワーを背景に今後一層現実味を増してくるのではないか。困難な課題に長期間に渡って辛抱強く取り組むよりも、ダイナミックなアイデアにより過去を一掃できる荒治療を米国が選ぶ可能性が高いような気もする。一方で、世界には米国の意志に関わらず複数の通貨がブロック圏のように共存する政治的&経済的な環境も進展しているのも事実であろう。
従って、今後世界の通貨制度は相対化の時代を経た後、IT技術を駆使した従来のドルに代わる『新・世界共通通貨構想』(デジタル・バーチャルマネー)なるものが近未来に実現されるのではないか。(兌換制度、金本位制への復活は金の絶対供給量の制約からみて現実的ではないと感じる)本書のサブタイトルは『多極化かアメリカの復活か(The Next New Order)』であり、これは世界各国が保有する外貨としてのドルの価値防衛策や、後継通貨に対する各国の思惑が複雑に絡み合って進展するだろう。その荒波のなかで日本の国益と個人の資産を守るための知恵が今一番必要とされている。
快人エジソン - 奇才は21世紀に甦る (日経ビジネス人文庫)
「エジソンなんて知ってるよ! 小さい頃伝記を読んだよ」
という人はこれを読もう。
自分の知っていたエジソン像と大きく異なっていることに驚くだろう。
メモしたいところに線を引いていったら本が線だらけになってしまいました。
それくらい学ぶことの多い人です。
忙しい中毎日必ず3冊の本を読み、書店の本は棚単位で買ったエジソン。
耳が不自由だったが、そのおかげで集中できたとポジティブに受け止める。
メモ魔であり、メモはノート3500冊に及び、その解析は2015年までかかるという。
莫大な研究費は、新聞を使ったメディア操作術で獲得。しかし常に研究につぎ込むため、社員に払う金にも困っていたというお金への執着心のなさ。
そして親日家でもあったエジソンの真の姿をみんなにも知ってほしいです。
石油の支配者 (文春新書)
昨今の狂乱相場ともいえる原油高は、いったい何だったのか。いくら百年に一度の経済危機とはいえ、この乱高下は尋常ではない。裏を返せば、いかに膨大な投機マネーが原油先物市場になだれ込み、価格をつり上げていたかがわかる。実需に見合う価格ではなかった。
原油価格は、単に需給メカニズムのみで決まっているのではない。石油は、国際的な「戦略物資」であり、「政治商品」だ。ゆえにその価格は各国政府、団体、企業などの「思惑」で決まるといっても過言ではない。
本書は書名のとおり、一読して、誰が石油を支配しているかが、よくわかる。国際的な石油利権の絡み合いにも踏み込んでおり、興味をそそられる好著である。
それでは、あの原油高の「犯人」は誰だったのか?
著者は、〈原油を人質にとった「マーケット・テロリズム」といえるような前代未聞の状況〉が迫っているとし、犯人を絞り込む。
著者は、その主役が、先進国の「インデックス・スペキュレーター(商品先物を買う機関投資家)」。具体的には、投資銀行やヘッジファンド、年金ファンド、大学基金、財団、富裕層の個人、政府系ファンドなどであるという。
その他の大きな要因として、 欧米の投機筋と同じように、「新セブンシスターズ」と呼ばれるロシア、イラン、サウジアラビア、中国、マレーシア、ブラジル、ベネズエラの政府系石油会社が原油市場に大きな影響力を持ちはじめているということが、重要である。
かつてセブンシスターズといえば、欧米の石油メジャー七社をさしていたが、これらの振興国の影響力は日ごと高まっている。新セブンにとって石油は「政治商品」である。その中でも、政治的観点から、とくに中国とロシアの動向からは目が離せないと著者は述
べている。