人形浄瑠璃文楽名演集 通し狂言仮名手本忠臣蔵 DVD BOX [DVD]
津大夫の太十を聴き、この世界に吸い込まれた私たち津大夫ファンには、このシリーズの菅原伝授手習鑑は大いに不満だったし、義経千本桜ではすしやの切でちょっとだけ満足したが、今回の特典映像の山科閑居は大いに満足できた。なにせ、本編で語っている住大夫は頑張っているし、最近声のかすれの気になる綱大夫にも意欲だけはあるが、津大夫の足下にも及んでいないのだ。また、特典映像で先代喜左右衛門や先代寛治の三味線が聴けるのも嬉しかった。判官切腹は越路が清治の三味線で語っていたが、近年では最も出色していたから、これは肯ける。勘平腹切りも越路の語りだが、先代の桐竹勘十郎の追悼番組でこの段は津大夫が語っていたので、その映像がNHKに残っていたのなら、ぜひ特典映像で加えて欲しかった。同じ段を覇を競いあった2人の人間国宝で聞き比べることができたなら興味が倍加したに違いない。この芝居がなお現代人にも共感を与えるとしたら、それは由良之助の生き方に対してではなく、事件の発端を招いた加古川本蔵のような人物が今日もまだ私たちの周りにいて、迷惑いているからである。ひょっとして自分自身も周囲に対しては加古川本蔵を演じているのかもしれない。歌舞伎ではこの人物は端役で、通しで演ぜられるときでも山科閑居は略されてしまうが、人形浄瑠璃ではこの段が最も重要な切場の一つで、ここにいたってこの事件の葛藤が加古川本蔵の死によって昇華されるのである。最近、文楽を見に行って寂しいのは、文楽を大黒柱として長年支えていた吉田玉男がいないことだ。このDVDでは往年の玉男が文楽という家の世帯主として由良之助役を中心に活躍している姿が見れるのも懐かしい。
仏果を得ず (双葉文庫)
「風が強く吹いている」の、しをんさんの新作ということで手に取りました。
「文楽」と聞いてもピンと来ず、「女殺油地獄」が出てきた所でやっと、江戸時
代でいう「浄瑠璃」のことだと気付いた次第でございます(笑)。
恥ずかしながら、私、卒論は近松門左衛門でした…。
「女殺油地獄」や「心中天網島」は、人形浄瑠璃の戯曲として書かれたものです
が、「文学」として専攻していたので、俄かには結び付きませんでした。
私と同じく、「へえ、文楽が題材なんて面白そう」というよりは、「風が〜」の
しをんさんの新作だから、と手にされる方がほとんどだと思います。
そんな方でも大丈夫!
心配いりません!
「女殺油地獄」の「与兵衛」とはどんな人間なんだ?、と必死に模索する健とと
もに、300年前から語り継がれてきた「文楽」の世界に、一気に引きずり込ま
れること間違いなしです。
もしかしたら、「風が〜」があまりに傑作だったので、この本を読むのを躊躇し
ている方もいらっしゃるかも知れません。
ですが、私は、江戸期における「文学」としても捉えられている「文楽」という
題材の方が、活字で表現するのに向いていると思います。
「風が〜」の、そのまま映画やドラマになりそうな、デフォルメされきったキャ
ラの書き込みはやや抑え目で、その分、各演目の内容が掘り下げられているので、
マンガチックな小説はちょっと…という方も、きっと読み応えを感じられると思
います。
とは言え、健の師匠の銀太夫さんが、ちゃんと、しをんさんらしい面白さも醸し
出してくれていますよ(笑)。
個人的なことですが、実際に戯曲を読んだことのある、「女殺油地獄」や「心中
天網島」が出てきたことや、社員旅行で実際に内部を見学したことのある「内子
座」が登場してきたことなどから、この本に出会えたことに、「不思議な縁」を
感じています。
人間コク宝
坂上忍から始まる微妙なスタンスがいいですね。
インタビューイの顔ぶれがものすごく充実している。
ばらけているようで、実は通じてているものがある。
読み飛ばす人がいない。
そしてそれぞれのインタビューイがそれぞれの世界観、生き様をきっちりと語ってくれる。
各人のでこぼこ具合が最高である。
そして、それぞれが自分なりの筋を通した半生を語っているので
読んでいてすがすがしい。
いろんな人が登場するので、
読む人もそれぞれシンパシーを感じるひとがいるはず。
私は真木蔵人がよかったです。
「粗にして野だが卑ではない」という言葉がふさわしい人ですね。
あの言語感覚、センスもユニーク。
私は彼が主演した
「愚か者 傷だらけの天使」という映画が大好きです。
10代の人にぜひ読んでほしい本。
こんな風に生きてもいいんだと感じられるのでは。