私本太平記(一) (吉川英治歴史時代文庫)
吉川英治さんは、新・平家物語を書き上げて、すぐにこの作品の執筆を始められたとか。驚きのひとことです。
僕は、高校時代のこの本を読みましたが、大変勉強になりました。というのも、この時代は多くの英雄が出ているのですが、相関図や背景がわからないばかりか、時代が何を基本に動いているのかわかりませんでした。
楠正成が忠孝の士といわれても、元は土豪の頭です。新田義貞も華々しく活躍するのですが、最後は朝敵だった足利尊氏が幕府を開いてしまうのです。まして、南朝と北朝に分かれて天皇家までが分裂。複雑な時代です。この時代を、モチーフもって、ひとつの物語として語られたのは、吉川英治さんだけと言っても過言ではないような気がします。
この本を読むことによって、当時の歴史を理解することができました。同時に、忠孝の士楠正成や天皇家の家事情を見ることもできました。
新・平家物語に並ぶ大河ドラマです。誰が、英雄だったのか。歴史を紐解く物語であり、必読の書です。
NHK大河ドラマ総集編DVD 太平記 3枚組
3枚組で編集も長けているため間然としないです。やはり、一年かけたドラマにはこれ位の時間でないと話がつながらない。パッケージに音声がモノラルとなっておりますがステレオ収録されています。 このドラマは何より配役が素晴らしい。主役の真田広之さんはもとより、片岡鶴太郎さんが演じる北条高時は、実際こうだったのではと思わせる役者ぶりです。楠木正成役の武田鉄矢さんも彼のアクの強い演技がプラスに働いて文句なしの出来映え。本当に的確なキャスティングで敢えてミスキャストといえば北畠顕家役の後藤久美子さんくらいでしょうか。 ドラマも実にスケール豊か。三枝成章氏の音楽、オープニングは男性的でダイナミック、藤夜叉(宮沢りえさん役)のテーマは美しく物悲しいメロディを奏でて心に響きます。個人的には歴代の大河ドラマでも屈指の素晴らしさだと思います。
NHK大河ドラマ 太平記 完全版 第壱集 [DVD]
1972年生まれの自分にとっては、「徳川家康」「独眼龍政宗」と並ぶ、「本格派」大河ドラマの最高峰に位置する名作。
近年、題材のマイナー化や、妙な現代流平和ボケ価値観を当てはめた似非歴史劇が増える中、正に「王道」を行く大作である。足利高氏演じる主演真田広之の演技は「見事!」の一言。もう一人の主役とも言うべき武田鉄矢演じる楠木正成の存在感、重みがまた素晴らしい。
(史実においても彼は、敵方足利視点の梅松論においてさえ智勇兼備の名将と絶賛されており、皇国史観のフィルターを除外しても尚、日本史有数の戦略家、戦術家、そして自らの理想に殉じた、魅力あふれる人物である)
後醍醐天皇、足利直義、高師直、佐々木道誉、北条高時...何れもが実力派俳優による絶大な存在感を放っており、また妙な平和ボケ勘違いや、似非ヒューマニズムを一切持ち込まない王道的な脚本も素晴らしく、悲しいことだが、もはやこのような歴史ドラマは二度と現れないであろうと思われる。
この太平記の後、大河ドラマは、演出や解釈の妙な現代化や、題材・視点のマイナー化が進み、英雄・覇者を描いた王道本格派は本作が最後といっても過言ではない。完全版の発売を十年待ち続けた。
ただ一言、至高の名作である。
太平記〈上〉―マンガ日本の古典〈18〉 (中公文庫)
マンガとしての説得力は本書の方があります。ひきつけて離さない絵の力と言うものを感じます。職場での休憩時間にサラッと読めるものをと思って買ったのですが、読み始めたら最後、一気に太平記の世界に引きずり込まれてしまいました。マンガ版で太平記を読みたいと思う方ならば、他社から出ているものよりも、さいとう版太平記を読むことをおすすめします。読み比べれば分かると思いますが、圧倒的な迫力の違いを感じます。