これがMBOだ!
MBOの理論の説明に留まらず、実際の経営陣の葛藤も含めて現場ではどうなっているのかを理解するうえで分かりやすい内容。投資ファンドというと、ハゲタカ的なイメージで捉えていたが、色々なタイプがあるということを実感した。MBOのような手法はもう少し日本でも応用してみる価値があるのではないかと感じる。ウチの会社にもその対象になりそうな部門や子会社がいくつかあるのではないか、と考えさせられた。
盛衰―日本経済再生の要件
20年余の長きにわたり、経済の停滞する日本の停滞原因の分析と再生のための方策について、まとめた書である。筆者のこれまでの主張も含め、必ずしも、新しい分析と主張が多い訳ではないが、日本経済の現状分析と再生策の集大成といえる。その観点からは優れた著作といえるが、それが筆者の専門分野ではないにしろ、解決するべき諸問題に優先順位をつけ、変化に抵抗する民衆をどのように鼓舞し、再生策を実現していくかの提示がないので、評論に終わる可能性が高い。
そうではあるが、一読に値する。
行政評価―スマート・ローカル・ガバメント
行政評価の目的、仕組み、導入方法などを具体的に解説している入門書である。海外の事例も紹介されるなど、幅広い内容を有しているといえ
るが、残念ながら情報が若干古い。日本において、行政評価が流行りだした当初の状況を確認する上では、有益な書籍といえるだろう。
岐路―3.11と日本の再生
グローバル・アイを持った経済学者として、また、ビジネスの現場にも通ずる筆者ならではの迫力あるメッセージ。
書は
第一章に東日本大震災の記録。第二章に経済への衝撃。第三章は、歴史に紐解き、ポルトガルの大地震に端を発する、国家衰退の例を取り、日本の今後の対応に警鐘を鳴らす。第四章は復興へのロードマップとして7つの緊急提言を、そして最終章は未来志向の日本へとして、東北被災地域に太陽経済都市圏構築を提言している。
第一章の大震災の記録は、時系列にまとめてあり解り易い。また筆者が被災地を足で得てきた情報なので、説得力がある。
中でも福島第一原発事故の記載は、全体の3分の1を割いての力作。
時系列な記録のみならず、政府や関係者達の動き、欧米の研究機関のレポートの紹介、そして原子とは!?被ばく、とは!?といった、科学の基礎的な解説をも含め、縦横に、この放射能問題をカバーしている。
この部分は、筆者のグローバルな切り口が冴え、そして、短期間に、これほど多岐にわたる専門分野の情報収集がなされており、読みこむ価値があった。それだけに、専門的な知識が、ある程度必要とされ、読むのには、てこずった。
書の後半は、復興へのロード・マップとして7つの提言が記されている。どれも、政府として、やらなければならないことばかり。この種の提言は、巷にあふれてはいるが、筆者は元内閣の特命顧問を経験しており、政策運営の裏表も理解した上で、提言していることと察する。よって、提言と同時に、その執行にいたるまでのボトルネックの指摘も、理解しやすい。
さてはて、筆者の、“この震災をバネに日本の再生を!”という熱い想いみなぎる、これらの提言。
これらを、いつ?、だれが?、どのように?、どのくらいのスピードで執行するのか?
それに至るまで、一読者として、何をしなければならないのか!?とまで、考えさせられる。
成功する!「地方発ビジネス」の進め方 わが町ににぎわいを取り戻せ!
首都圏への一極集中と人口減少の中で「地方発ビジネス」という言葉自体アンビバランスな響きを持つが、本書は地方活性化の工夫や知恵をきめ細かく具体的に紹介する。地域交通サービス、コンシェルジェサービス、地域ブランド等のポイント解説もあるが、実績や効果が数字で示されず事例紹介集の域を出ていない。内容もビジネスと言うより、地方の退行を食い止める独自の改善等に止まり、全体に物足りない。実際には平成の大合併を経て、各自治体は物理的に拡散した市域の経営に大童で、ビジネスの発信どころではない。我が富山でも森市長が「コンパクトシティ構想」を打ち出し、行政の効率化と高齢社会への対応を目的に周辺部から市中心部への人口移動を積極的に進めている段階で、「ビジネス」はこれからだ。企業の支店・営業所が消えていく「地方」で観光以外にビジネスは成立するのだろうか。私自身、呻吟している。