ガダラの豚 1 (集英社文庫)
らもさんが好きでよく著作を読むけれど、これは正直、見るからに長編小説(単行本で598ページというボリューム!)という感じで、短編やエッセイが好きな自分は、ずっと読むのを後回しにしてきた。
しかし、いざ読みはじめたら止まらない止まらない。こんなに面白いのであれば、もっと早くに読むべきだった。面白い小説を読むと「寝れなくなる」なんて言うけど、本当に徹夜して読み切ってしまったのだった。
話の大筋は、日本とアフリカを舞台にして展開している。作品を貫くテーマは『呪術』だ。
密教、手品、超能力、心理学といった様々な分野の専門家たちが登場し、最終的にそれらが呪術に結びついていく。終盤は、主人公でアルコール依存症の民族学者大生部とアフリカの呪術師バキリとの息をのむ対決。
日本の古代史まで踏まえた上での作品構成は、中島らもらしい豊富な知識と緻密な筆致で書かれており、鋭い洞察に感嘆する箇所多数。コアな世界観ながら、誰が読んでも面白い一大エンターテインメント小説に仕上がっている。思わず引き込まれてしまった。
山田風太郎 (別冊太陽 日本のこころ)
別冊太陽のムック、作家シリーズの最新号です。山田風太郎さんは、1922年(大正十一年)生まれで、2003年80歳で亡くなられました。本書はこの山田さんの一生を編年順に、色々なエピソード、関連資料、関係者のエッセイ等を間に挟み、豊富な写真と共に紹介していて、一種の自伝といった趣もあります。
山田さんは医者一家に生まれました。しかし、5歳の時父親が41歳で急死、そして、その後母親は再婚するんですが、風太郎、中学一年生が終わる頃、今度は最愛の母親を亡くします。このことで自暴自棄になった風太郎の生活は荒れてきます。そして、不良仲間4人の間では、お互い符牒で呼び合いましたが、これがペン・ネームの由来になっています。その後、風太郎は旧制高校進学に失敗し、東京医専に進学します。そして、在学中に宝石の懸賞小説に応募し、達磨峠の殺人で入選します。また、眼中の悪魔、虚像淫楽で日本探偵作家クラブ賞短編賞を受賞し、江戸川乱歩の知遇を得、医師の国試を受けず、作家として生きていく事を決意します。そして、探偵小説作家として、人気を博しますが、1958年甲賀忍法帖を皮切りに最終作開化の忍者まで全111作の作品をものにし、一躍時代伝奇小説の雄となります(これは私も鮮明に覚えていて、親父の本を隠れてこそっと見ていた記憶があります・・子供には少しエロティックすぎるので)。その後、明治もの、室町もの、等数々の秀作をあらわし、あと千日の晩餐、等のエッセイを残しこの世を去ります。
書誌学的には少し物足りないですが、主な作品は日下三蔵さんが3つに分類しカラー写真入りで解説されています。また、医専時代の学友、高安健之さんの談話、編集者、原田裕のインタヴューが掲載されていて、谷崎ぐらいなら自分でも書ける、金遣いが荒かったので、原稿料の半分は別途強制的に積み立てていた等の興味深いエピソードが披露されています。当然奥様のエッセイもあります。そして、蔵書の写真、風太郎さんの絵(かなり上手い)も興味を引きます。
昨今、最も発掘が遅れている少年小説も2冊出て、有難い限りです。少し高価ですがこの本で、風太郎に興味を持って、これはと思うものを読破してください。幸いかってに比べ殆どの本は比較的容易に入手できると思います。
甲賀忍法帖 山田風太郎忍法帖(1) (講談社文庫)
最近、コミック化され、アニメ化され、更には映画化もされるなど、再評価されている作品ですが、初めて世に発表されてから実に50年近くたっているのです。にもかかわらず、今読んでみても全く古さを感じさせない、真の意味でのエポックメイキングな作品だと思います。
この作品は忍者が2つのチームに分かれて闘うという構図なのですが、これは、現在でもコミックやアニメでもてはやされている、チームバトル物(ドラゴンボール、幽遊白書、烈火の炎etc、)の原点といえるでしょう。また、そのバトルを支える、数々の忍法も実に独創的で、これが50年近く前にかかれた作品なのかと驚きさえ覚えます。
ストーリーも非常に軽快なテンポで進んでいきますし、その場その場の状況がありありと浮かんでくるほど表現力も巧み、キャラクターの配置も絶妙と、読んでいて退屈を感じる暇がありませんでした。
若干の現在ではタブーとされている表現や、あまり口語では使われなくなった言葉などもありますが、こういった作品なら、活字嫌いの方々でも最後まで読破できるのではないでしょうか。「バジリスク」を面白いと思った方、バトル物のコミックやアニメが好きな方、是非ご一読ください。活字の面白さに触れられるチャンスかもしれませんよ。
くノ一忍法帖 DVD-BOX PART 1
ネットで物を買う。いい時代になったものです。胸をどきどきさせながら見たものです。大阪の戦いの時代から、元禄時代までのもの。コンパクトにまとまっているので見やすい。術もしっかりしているので面白い。後の作品、SHINOBIのエロチックバージョンか。
山風短(2) 剣鬼喇嘛仏 (KCデラックス)
1巻は最後がやや寂しい終わり方でしたが、今作はすっきり。
忍術に関してはあいかわらずトンデモですが官能度アップの上、なによりヒロイン登世が可愛すぎる。
くのいちと思えぬ程純情、術の内容もあるが終始赤面しっぱなしで山田風太郎作品と思えぬ萌えっぷり。
お話もコメディ度が上がり、くすっと笑うところも所々あり。締めも良い感じに収まっておりました。
前作でう〜んとなった方もテイストがかなり違ってこちらは楽しめるかも知れませんので、敬遠せずに手に取られても良いかと思います。