知の回廊 第59回『林芙美子の『恋の故郷』尾道を歩く』
監修:渡部芳紀(中央大学文学部) 小説家、林芙美子は、明治36年(1903年)12月31日、宮田麻太郎と林キクの間に、私生児として誕生した。その後、両親が別れ、行商人であった沢井喜三郎が養父となり、母キクと三人で行商を営みながら各地を転々とし、広島県の尾道市に移り住む。当時の様子を描いた作品が、『風琴と魚の町』である。 尾道市立高等女学校へ進学し、恩師である今井篤三郎の指導により、次第に文学の道を志すようになる。女学校を卒業後、恋人であった岡野軍一を追って上京するが、岡野家の反対に遭い、軍一は因島の実家へ帰ってしまった。1人、東京に残った芙美子は、貧困にあえぎ、職を転々としながらも、作家としての活動を続けていった。ベストセラーとなった『放浪記』は、芙美子が19歳から23歳までの5年間、当時の多感な日々を書き綴った、自伝的作品である。 幾度の恋愛を経たのち、大正15年(1926年)、画家の手塚緑敏と結婚。昭和16年(1941年)、東京新宿中井に自宅を建て、数々の代表作を発表した。『晩菊』で日本女流文学者賞を受賞するが、昭和26年(1951年)6月28日、いくつもの連載を抱えたまま、心臓麻痺のため急逝。享年47歳。波乱に満ちた人生に、幕を閉じた。 林芙美子の作家としての出発点となった、広島県の尾道市を歩いてみよう。 (登場人物の肩書きや施設等の名称は番組制作当時のものとなります) 2007年度制作 twitter.com
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