ベスト・マスター・クォリティーズ
オムニバスと言うと、コアなジャズ・ファンは「初心者向け」などとバカにしたがるが、実はオムニバスほどいいものはない。(ただし選曲がよければ・・・。)なぜなら、選ばれるのは、名曲、美曲ばかりであって、出来の悪い曲(いわゆる捨て曲)が選ばれることは少ないので、そのアーティストのいいとこ取り、エッセンスを味わうことが出来るのだ。で、このアルバム、いそしぎ、シェルブールの雨傘、思い出の夏など、美曲がザクザク。アン・バートンのバックで有名なオランダ・ジャズ界の重鎮、ルイス・ヴァン・ダイクのよさが楽しめる(松本敏之)
ヒトラーの戦艦―ドイツ戦艦7隻の栄光と悲劇 (光人社NF文庫)
ナチスドイツ陸軍に比べ、いまいち影が薄い海軍の七隻の戦艦物語。
それは、海軍建造計画が完成する5年も前に戦争が始まったことに加え、「海の上での
臆病者」を自認する総統閣下の変な干渉の結果である。
ドイツ戦艦は外見が優美であるだけ、その悲劇性も際立って感じられる。
特にビスマルク・ティルピッツの両戦艦は最後が対照的とは言え、その極限だろう。
著者はその物語を公平な目で見た上で、力強く描いていて非常に面白い。
ドイツ海軍(デーニッツ)が最後に死力をつくしたことが、東部戦線からのドイツ人
(軍人・民間人問わず)引き上げの支援(輸送・対地砲撃)だったことは、ナチス
に支配されていたとはいえ、軍隊の本質がその国民を守ることだということを
貫いており、日本陸海軍との余りの性格の違いに呆然としてしまう。
ドクター・シンタックス
エドウィン・コリンズが脳卒中で倒れる前の2002年の作品。2007年の作品「ホームアゲイン」は倒れる直前に録っていた音を、倒れた後に編集して作った作品なので、本作が体調が万全だったエドウィンの最後の作品ということになる。3rdであった94年の「ゴージャス・ジョージ」から続くレトロフューチャーな厚みのある音作りがしっかり板につき、本作はちょうど円熟期だったと言えるだろう。メロディ、歌、そしてサウンド共に、自然体でエドウィンしか出せない味わいを醸し出している。こぼれ落ちた者たちに対する優しい眼差しもこのアルバムは顕著であり、この視点はオレンジ・ジュースでの苦い経験以降、常にエドウィンは一貫している。特にM7の「SPLITTING UP」なんかを聴くと、エドウィンの基本的姿勢がよく伝わってくると思う。これほど落伍者に優しい歌はないだろう。
そして今2010年10月、ついにエドウィンが倒れた後の本当の意味での新作がリリースされる。僕は実は自分も体を壊し、しばらく会社を休んでいた。それだけにエドウィンがどんな希望を持ってカムバックしてくるのか、まるで他人事じゃない。今日にも新作がポストに投函されるその前に、今作を聴きながらレビューしてみた。
欲望と幻想の市場―伝説の投機王リバモア
タイトルと装丁は奇抜だが、内容はリバモアの相場に取り組んだ人生が真摯に書かれている。相場師の人生の読み物としても十分面白いが、文章のそこここに金言・名言と呼べるような言葉があふれている。何度も読み返したい本である。