コミック 銭 1巻 (Beam comix)
著者はファミ通で緻密な取材漫画を連載していた経歴がある。制作メーカーの事情に切り込んだ内容であったので社会見学をさせてもらってるような気持ちで毎回楽しみにしていた。さて、この作品だが、やはり社会の内情にしっかり切り込み、銭事情をうまく描いている。またストーリー漫画としても十分読めると思う。絵がごちゃごちゃして見辛いことがたまにあるが、著者の他の作品が好きならば絶対読むべき。
マンガ 物理に強くなる (ブルーバックス)
漫画を通して高校物理の一部の分野を学べる本です。
解説される内容は、高校物理の力学分野の内、運動量、エネルギー、
円運動、単振動を除いた基礎的な部分だけです。得られる知識自体
は少ないのですが、物理を学ぶ上での大切なエッセンスが含まれている
ので、積み重ねを旨とする物理の学習においては非常に有効だと思います。
教科書ではあまり詳説されない「質量」の概念に拘った解説は好感が
持てました。
物理はイメージが大切なので、その雛形を学ぶにもいいでしょう。
前作の化学編同様、作画の方がちゃんと理解して描いているなあと
感じます。
限界集落温泉(3) (ビームコミックス)
1,2巻は次々と登場人物が現れ、ストーリーの展開も変化が激しい内容だったと、個人的に思います。
しかし、この3巻は登場人物はそれなりに出尽くし、物語も激しく変化を伴って変化していく、というよりは深度を深めていくようなストーリーの進行になっているような感じがしました。
それが、1,2巻にはなかった面白さとして感じられましたし、4巻以降の展開への期待も高まりました。
あと、中願寺有希というキャラの内に秘められた禍々しさに魅かれました。
じっくり読める巻になっていて、いいと思います。
僕と日本が震えた日 (リュウコミックス)
3.11東日本大震災について、様々な被災の観点から語ったマンガ。
東京や千葉の被災者の視点、書籍流通の被災者の視点、先端科学の被災者の視点、経済学の視点、食品汚染被災者の視点、東北の被災者の視点等、得てして偏りがちな視点について、ひとつだけではなく多数の人の目を通じて語ることで、複数の視点から震災を捉えている。
特に書籍の流通については、出版界という身近だがよく知らない業界が直面した問題について、分かりやすく描いている。
確かに紙とインクがなければ本は刷れないし、倒壊による被害よりもスプリンクラーによる水濡れの被害の方が深刻という話しや、被害にあった書籍の損失を誰が被るのかなど、業界外からは分からない問題について触れられていて、おもしろかった。
先端科学施設についても、確かにつくばは研究施設が多くかつ被害が小さくなかったので、大きな話題にはなっていないが、金額的・時間的な被害は甚大だろう。
ルネサスなど民間企業が操業停止になると、取引先の企業が協力することでニュースでも取り上げられていたが、直接的に誰かに利益を与えていない公的な研究機関や学術施設が被害を受けることの大変さがよく分かった。
経済編については、『すべての経済はバブルに通じる』の小幡績が解説していて、確かに「地域の人々が望んでいることをすべき」という意見について異論はないが、円高や成長についてなど、本題と違うことを俎上に載せながらばっさりと切り捨て、強引に持論を展開する内容には疑問を感じた。
数ページのマンガで経済学についての深い反証を行うのは無理にしても、少し極論が多い気がした。
また、放射能についての分かりやすい解説も載っている。
正しい知識を身につけて、自分で考えて判断すること。
最終的に判断するのは自分自身でしかない。
判断材料として、評価できる一冊。
マンガ 化学式に強くなる (ブルーバックス)
『何と何を混ぜれば、何と何と何が出来る』というのを記述、予想することは、
化学の重要な問題のひとつだが、『何と何を混ぜれば、何と何と何が出来る』
といった話を定量的に理解、つまり『どれくらい?』という視点を持つことは、化学
を理解するうえで最も基本的であり実は(そもそも人間は定量的理解に向いていない
こともあり)難しい。
この本は、特に化学反応に『どれくらい?』という視点を持たせることに焦点をしぼって
きた。確かに定量的な視点を持てると理解が早いのだががそこまでで僕(評者は物性物理の
専門なので化学には近からず遠からずの身だが)も含めて多くの人が苦労する。定量的な視
点をここまで手際よく教え、一気に視界を広げるさまは見事である。
さらに、『論証』のしかたも綺麗で、実験や理屈の配置のしかたが、これ以上のものは
考えにくいというほど洗練されている。実験の説明もここまで丁寧に説明してあるのは
そうそうない。そういう意味で、スピード感を持って一度通読した後、もういちどじっ
くり『お兄さん』の説明を鑑賞し再構築できるまでに理解すれば、化学をふくむ自然科
学全般を学ぶ上での勘所がわかるのではなかろうか?