An Introduction to Atmospheric Radiation, Volume 84, Second Edition (International Geophysics)
放射伝達、特に氷雲の放射効果の研究における世界的第一人者が書いた本。大気放射学の標準的な内容はカバーしていると思われるが、事実や数式の羅列が多く、基礎に基づいた見通しのよい物理的解釈の記述があまり見られない。放射伝達の計算法を具体的に使えるレベルまで理解するためには他のもっと親切な教科書か原論文を読む必要があると思われる。したがってこの本は、補足資料や辞書として使用するのは有効だが、理解を目的としたPrimaryな教科書として使用することは進められない。他の項目に比べて著者自身の専門分野である氷雲の研究について非常に細かいところまで書かれている。一般的なタイトルを付けた教科書に自分の細かな研究結果を長々と記述するという点からも、よく教育的配慮がなされた教科書とは言えない。
この本と対照的にBohren and Clothiauxの教科書「Fundamentals of Atmospheric Radiation」は、具体的な事実や数式の羅列より、基礎項目の物理的解釈が充実して書かれている。相補的に読まれることをおすすめしたい。