出久根達郎 商品

出久根達郎 万骨伝: 饅頭本で読むあの人この人 (ちくま文庫)

これはエッセイでも随想でもありません。長く古書店主でもあった著者が、多くの饅頭本(故人を偲ぶ追悼本)から古きよき日本人を紹介した立派な歴史書と言えます。

追悼本は、私家版としてその人を知る限られた人数にしか配られなかったため、葬式饅頭に模してそう呼ばれたそうです。また、意外な有名人が文を寄せていて古本屋としても「おいしい」意味もこめているとか。

タイトルの「万骨」とは「一将功成りて万骨枯る」からとったとのこと。万骨として無名のまま生涯を送り、本書によって紹介されることとなった人物は政治家、実業家から運動選手まで実に多彩。現代人の多くが知らぬ人ばかりですが、生前の生き様を見ると、埋もれさせておくには惜しい日本人ばかりです。

「ある人が陸に、後世に名を残すような事業をやったらどうか、と意見をした。陸はこう答えた。自分の意見が多少行われていれば、これほどありがたいことはない。死後の名声なぞ希望しておらぬと。」(「日本」の主筆 陸羯南)

「五十五年後の昭和四十二年(1967年)、金栗はストックホルムに招待され、思い出のスタジアムで二十メートルほど走った。ゴールテープを切ったとたん、スタジアムに粋なアナウンスが流れた。
『日本の金栗、ただいまゴールインしました。タイムは、五十四年八ヶ月六日五時間三十二分二十秒三。これをもちまして第五回ストックホルム・オリンピックの全日程を終わります。』 七十五歳の金栗のコメントも、いい。『長い道のりでした。その間に孫が五人も生まれました。』」(長い道のり 金栗四三)

それぞれどんな生涯を送った人物であるかは本書を読んでもらいたい。みなユニークで魅力的で、平成に生きる私たちの参考になりうる人物ばかりです。

最後に苦言を一つ。「『道草』は漱石の最後の長編である。未完に終わった。」(師弟三世 岡本信二郎)とありますが、たぶん「明暗」のまちがい。 万骨伝: 饅頭本で読むあの人この人 (ちくま文庫) 関連情報

出久根達郎 人生案内: 出久根達郎が答える366の悩み

 今年(2015年)1月の読売新聞「人生案内」欄に、
10年近く交際した彼氏が二股をしていた上に
「結婚することになった」と言い出し、
しかも「今後も心も身体を許せる仲でいてくれ」と言われ、
相手の罪悪感の無さと、見抜けなかった自分の不甲斐なさに
耐えられない、でも相手を完全に嫌いになれない、苦しい、
という切実な相談が掲載されていました。
 そこに回答をされていたのが出久根さんでしたが、
「選んだ相手のレベルはあなたのレベルなのです」と
バッサリ切り捨てていました。回答の詳細は省きますが、
相談者の女性も、多分ここまで言われたら未練など残らない
のではないでしょうか。出久根さんなりの荒療治で、若干
強引に背中を押して一歩を踏み出す助けをされたと思うのですが、
無上の優しさが感じられます。
 本書はそんな相談と回答が366件、飽きさせない一冊です。 人生案内: 出久根達郎が答える366の悩み 関連情報

出久根達郎 本と暮らせば

出久根達郎の愛読者。本への愛情に貫かれるいかにも彼らしい作品。 本と暮らせば 関連情報




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