常磐線中心主義（ジョーバンセントリズム）

視点の異なる多くの著者が、東京を起点に何県にもまたがる常磐線の駅々とその土地の文化についてリレーしていく方式です。フルコースのお料理のように、熱い、冷たい、軽い、しっかり、といったいろいろな味が楽しめます。全体を通して、ユニークな視点です。たとえば内郷駅は私にはキラーパスのような切り口に思われました。でもすてきなのは、本のほうからマニアックな個性やローカル愛などを「熱く語りかけてくる」のではなく、メディアにあまりのらない類のローカルを思い入れとともに語りながらも、どこか客観的なところです。そのためか、全体を通して、ユニークでありながら謙虚な雰囲気で品のある、静かな、でも求めると多くを教えてくれる本でした。東京と地方の関係はもとより、東京という町自体も地方の人が住んで形成されているという点もふと考えさせられました。書店ではいろいろなカテゴリーに分類されているのを見かけ、分類されている棚に興味のある人にしか届かないのではないかと思います。しかし、内容としては、常磐線の各駅の歴史文化はもとより、自分の住んでいるところについて思いをめぐらすための、さまざまな視点提供をしてくれる本だと思います。ごく個人的には装丁も秀逸だと思います。おもしろい本でした。 常磐線中心主義（ジョーバンセントリズム） 関連情報