chris cornellの4枚目のソロ作は、アコースティックなサウンドでまとめられた、美しいアルバムだ。
今作がこういった趣きの作品になることは、前作「songbook」とそれによるツアーである程度予想はついていた。が、作品の完成度は期待以上なのである。
まるで流れる水のような清々しさ…。
いつも何処かに影を抱えているようなchris cornellというシンガー。だからこそ、あの呟くように歌い、そして時に吠える強烈なシャウトにすっかり魅せられてきた。
今作ではそういった展開は少ない。曲がそういったものを求めていないとでもいうのか。かといって彼の個性が決して失われたわけではない。それがかえって、今作が独特の魅力を放っている要因にも感じられるのだ。
ハイライトと思えるような曲もあるが、かといって捨て曲と思える曲もなく、トラックごとのレビューはしにくい。
個人的には後期the beatles、又はjohn lennonを思わせるような、そんな風合いをこの作品から感じている。昔のchrisには無かったものである。
それにしても、歌い始めた途端にリスナーを引き込んでいく圧倒的な歌声。そしてsoundgardenから続く独特な世界観…。
彼が未だ作品を作り続け、それに出会えているという事は喜びというより他ない。
Higher Truth 関連情報
本作は、クリスの3枚目のソロ作品です。今回は、なんと!!!ティンバランドをプロデューサーに迎えた作品です。そもそもはティンバランドからのラブコールにクリスが応えて実現したものだそうです。
ちなみにティンバランドとは、Justin TimberlakeやAaliyahやマドンナ等を次々にビルボードチャートのトップに送り込んで、“21世紀のスーパープロデューサー”の名をほしいままにする、ヒップホップ/ソウル/R&Bをベースにしたポップミュージックの職人です。本作でのビート(リズムトラック)も、そのティンバランドの専売特許と言える、パーカッション的な装飾を配した独特なデジタルビートが多く、今までのクリスが鳴らしてきたサウンドとは距離のあるサウンドです。
しかし、上記のような他のティンバランドのプロデュース作品と決定的に違うのは、作曲そのものはクリス自身なので、表現されているものは、まぎれも無いクリスのものそのものだということです!特に6曲目〜9曲目あたりは、サウンドガーデン以来のファンにもおなじみの、曲そのものは典型的なクリス節と言えます(実際、#8"Long Gone"と#9"Scream"は通常のバンド演奏でのライブでよくやっているようですし)。
つまり、「あのティンバランドのプロデュース」と言っても、流行のポップミュージックになってしまったのではなく、あくまでシンガーソングライター・クリスコーネルの歌を中心にした作風です。ティンバランド自身がサウンドガーデン時代からのクリスのファンというだけあって、クリスのキャリアやスタイルに最大限配慮したプロデュースぶりです。クリスのインタビューでも、「ロックに、ヒップホップにあるようなリズム感を取り入れたかった」と語っている通り、なにも全く別なことをしようとしたのではないことも分かります。リズムによる表現を強化するためにティンバランドと組んだ意欲作と捉えれば、すんなり聞けます。
つまりつまり、以前からのクリスのファンで、デジタルなビートに抵抗があるわけではないのなら、必ず良さの分かる作品だと思います。
Scream 関連情報
心身共に充実しているせいか、このアルバムは前向きで明るい。前回のソロ「EUPHORIA〜」の一貫して根底にあった哀しみ、アイロニーがないので、SOUND GARDENからのファンとしては、つらい・・・1と14くらいだもん。7は新境地開拓、13なんかもAUDIOSLAVEの2ndでヒットした曲の発展した作風なんだけど、どうもギターがなあ〜〜。全体的に言えるけど、ギターの味が無い。アリ・チェンのJERRY CANTRELLみたいな曲のツボにはまるギターがあってると個人的に思う。
と、ここまで否定的な事を書いたけれど、曲調の幅が広く、CHRISが自由に気持ちよく歌っているので(さすが!何でも歌いこなせる)彼のファンなら持っててもいい一枚じゃないですか。8だけも必聴だよ。
Carry on 関連情報