太平洋ごみベルト 商品

太平洋ごみベルト プラスチックスープの海―北太平洋巨大ごみベルトは警告する

沿岸漁師の船で、彼らが海はゴミ箱とばかりに(そのように言って)ゴミを捨てる光景を何度も目にしたことがある。 無論、抗議をするのだが、悪びれた様子もなかった。 82年の連邦政府が資金援助をした研究では、毎日63万9千個のプラスチック容器が商船から捨てられているとされる。 平均的なクルーズ船は1週間のクルーズで50tの、プラスチックを含む固形ごみを出す。 90年代はさんざん違反していたが、やがて改善された。 米の大型船は、出る時積んでいた時物資と、戻って来た時積んでいた物資の明細を、沿岸警備隊に報告するよう求められる。 しかし、人手不足から検証はほとんど行われていない。 コンテナ船は、海が荒れると荷を満載したコンテナを海に落とすことがあり、船積み技術が改良されるまで、90年代に最高で年間1万個のコンテナが落下しているというが、97年3月に独コンテナ船が英シリー諸島で座礁し、コンテナをぶちまけた事故で、英の地方自治体が負った£10万の費用を、国際海事法では船主に賠償責任はないと独法廷は下したように、事故の責任は免除されている。 75年、米科学アカデミーは、毎年635万tの廃棄物が船舶から外洋に投棄されており、その1/3が米の船舶からであると推定しているが、おそらく世界最悪の海洋汚染者である米海軍は、6千名の人員を乗せた航空母艦では半年の航海で1360tのゴミを出す。 また米海軍報告によれば、80年代に世界の海に2千tのプラスチックを投棄し、その大部分は砕けた形でまだ海にあるだろうとしたばかりか、 ○29,000トンの神経作用物質とマスタードガス、 ○四十万発の化学爆弾、地雷、ロケット、 ○500トン以上の放射性廃棄物を、 ひそかに甲板から投げ捨てるか、船倉に詰めこんで沈めるかしているとする。 09年のソマリア沖の海賊襲撃人質事件でも、海賊は海軍のゴミ投棄を襲撃だと思ったが、フィリップス船長はゴミと知っていたとの逸話がある。 国連環境計画は、09年、6億1500万tのプラスチックが海洋投棄されていると試算している。 88年、船舶の運航および事故による海洋汚染を防止するマルポール条約附属書'Xが発効し、船舶に対する海上のゴミ投棄を禁止し、米国でも自国EEZ内でのプラスチック投棄は禁止されている。 更に2013年改正され、食物くず等海洋環境に有害でないものを除く船内発生廃棄物の海洋への排出の原則禁止(12海里以遠での船倉洗浄水の海洋投棄が認められていた)や、船舶発生廃棄物汚染防止規程を備えおかなければならない対象船舶の拡充がなされた。 ブリュッセルで開かれた欧州委員会の海洋ごみ投棄に関するワークショップでは、国連環境計画のデイヴィッド=オズボーンが、プラスチック包装にタバコのラベル表示と同様の「プラスチックのごみ投棄は野生生物に窒息、飢餓、拘禁などの脅威を与える」と、つけてはどうかと提案していた。 プラスチックは、現実的な時間枠の中では生分解(生物作用または生物由来物質による分解)せず、「太平洋のゴミベルト」に浮かぶペットボトルのキャップなどの海洋ゴミは、面積にして日本の国土よりも広範囲で、海流に沿って漂い続ける。 ゴミには藻類・珪藻類が着生し、重くなって沈み始め、光合成ができなくなるとバクテリアがそれを食べ、また浮くサイクル(ヨーヨー理論)が繰り返されるとも言われる。 浮遊するだけでも、貝が寄生して、別の島に漂着し、その島の生態系を崩してしまったり、有毒藻類の胞子が張り付き、発生するドウモイ酸の神経毒をばら撒いている。 網や釣り糸は魚だけではなく、アザラシ・イルカ・シャチなどの海洋動物も巻き込み続けており(人への影響でも、韓国水域では96〜98の2年間で、海洋浮遊物の事故が2273件起き、船舶又は人命の損失が22件)、その害について異論が出ることはないが、ゴミの摂食による害の証明について、アザラシや鯨等上位捕食者の調査はあるが、食物連鎖の底辺はなく、本書ではハダカイワシの例等が記されるが、不明点が多い。 プラスチックは自然界で分解はされないものの、徐々に割れて破片になり、やがてナノ粒子となって幾世期も環境を汚染し続ける。 ミッドウェーで、コアホウドリの幼鳥は、毎年10万羽死んでいるが、うち4万羽はボトルキャップ等の誤食によるもの。 ごちそうであるトビウオの卵が、たいていプラスチック浮遊ごみの上によく漂っていたり、ピカピカ光り、色鮮やかで、ピョコピョコ浮く物が好みの食べ物であり、63年の調査では、アホウドリの73%がプラスチックを飲み込んでいたし、83年にはコアホウドリの幼鳥の死体の90%にプラスチックが見出され、摂取されたプラスチックの重量は63年に1.87グラムだったのが、76.7グラムに激増、幼鳥の98%からプラスチックが発見された。 またウミガメは、好物のクラゲとレジ袋を間違えやすく、解剖したウミガメの80%の内臓に海洋ゴミが見出され、そのほとんどがプラスチックだった。 陸でも、ラクダ・牛等がプラスチックゴミ摂食で、犠牲となっている。   高田秀重・東京農工大教授は、プラスチック樹脂ペレットは、浮遊しつつ毒性化学物質を吸収していると立証した。 そしてPCB・DDT・ノニルフェノールなどを蓄積し、海洋生物に摂食される。  他の汚染として研磨剤や掃除用コンパウンド・塩ビ管や回転成型のための原料となるプラスチックの粉・美顔用クレンジング剤にふくまれる皮膚摩擦剤等、1mm以下の微細プラスチックや、防水剤等の過フッ素化合物、臭化難燃剤等があり、プランクトンや魚を経て、食物連鎖を繰り返すうちに、段々とプラスチックから発される環境ホルモン等の毒素濃度は濃くなり、頂点のヒトに摂食される。 健康被害は世界中で報告されているが、環境ホルモンが原因と特定はできにくい。 それでも殆どの胎児と母体を繋ぐ臍帯や、成人の尿等から環境ホルモンは検出されている。 このような状況下で、米は害の証明にこだわる(日本も)が、欧州は予防原則を選択する。 その結果、欧州人は米人ほど体内に化学物質、特に臭化難燃剤をためこんでいない。 そして、風船ですら08年カリフォルニアの議会でホイル式風船を禁止する法案が通過した際、$9億/年の売り上げをもつ業界が反対して廃案になっており、70年にはゼロだったが、11年には5千億枚になったレジ袋や、毎日、15億本もペットボトル入りの飲料を製造し続けるコカ・コーラ社等、プラスチック業界と化学業界につながる大企業に変化を求めるのは気が遠くなる。 このように使い捨ては善とされ、常にキチンと捨てない人が問題で、使い捨て容器の問題ではないかのようにキャンペーンされてきた。  著者は最後に海洋分解性プラスチックの開発や、消費者の賢い購買行動(リサイクルしやすさ・長持ちするか・新たな資源採取への地球へのストレス・毒性等)への変化を希望して〆る。 高田教授も使い捨てについて、リサイクルやゴミ焼却施設も提案されるが、これはシステムが上手く回っていればOKだが、事故が起これば有害物質が放出される可能性があるとの点で、原発の安全神話に似ていないか?とし、代用品へのシフトを提言する。 この環境問題は、突然、目に見えて被害をもたらさない。 放射性汚染が目に見えない悲劇と同様に、見えないことはなかったことにされ続けさせてはならないのだが・・・。 プラスチックスープの海―北太平洋巨大ごみベルトは警告する 関連情報




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