この本は、事故にあった時の人のとっさの行動を、大まかに三種類ほど解説しています。一つはなすすべもなく死んでゆく人や何もしない人、適切な判断で助かる人、そして自分の危険を顧みず他人を助ける人です。それぞれの行動が、何が原因で、なぜそうなるのか、心理学の研究を使って解説しています。扱っている例は、新しいものでは、ジョージア工科大学での銃乱射事件や911、ハリケーンカトリーナななどアメリカの例。アメリカ以外では、ゲリラに人質いなった人、カナリア諸島でのジャンボ同士の激突や、メッカの巡礼など。古いところでは、ユダヤ人をかくまった人など。ハドソン川へ無事に着水したUSAirの例は本書の刊行後だったのでしょう扱われていません。助かるために、とっさの判断や機転が大事であるとはいえ、やはり日頃からの備えが大切ということがわかりました。私は飛行機乗ったら、必ず非難についてのカードを読み、近い非常口を確認します。しかし、ホテルでは非常口の場所をたまに確認するだけで、実際に、そこを使って降りることはない。本書にも書いてあったけど、アメリカのホテルで非常階段で降りたら、荷物の搬入搬出用の空き部屋に行きついたこともあります。今後も、日常生活で安全への備えを忘れないようしたいと思います。 生き残る判断 生き残れない行動 関連情報
多くのブロガーたちも紹介する、話題の本。著者の考え方は、130ページにある「3つの進化理論の違い」の部分がいちばんわかりやすいかもしれない。「ダーウィンの進化理論」では、環境Aの中で自然選択が起きる。環境Aのなかで、適応度の高い順に、x,y,zという遺伝子型があれば当然、適応度の高い(つまり強い者である)xが勝ち残る。「総合学説」では、安定化選択と方向性選択の2つに分類され、安定化選択では、ダーウィンの進化理論と同じくxが生き残る。方向性選択では、環境がAからBに変化したとして、仮に、環境Bへの適応度が高い順に、z,y,xとすると、従来の環境Aではxが生き残ったけど、環境Bでは、zが生き残ることになる。そして、著者の主張する「環境変動説」では、環境Aにも環境Bにも対応しやすい、yが生き残る、ということになる。つまり、最も適応度の高いもの(=強い者)が生き残るわけではない、という考え方である。そこで、こういう考え方にたったときに、なにが大切になってくるのかというと、「協力行動」である。この考えかたは、ファンドのような「経済的な強者」が自分たちの利益ばかりを追求しすぎたために、社会全体が崩壊しつつあることとも関連している。著者の主張や、それの社会や経済への応用も非常に興味深い。また、進化論にまつわる、今までの議論をうまく整理してくれている点でも、非常に有益な本。 新潮選書強い者は生き残れない環境から考える新しい進化論 関連情報
まず、いかにも東京下町の職人らしい語り口が生かされていること、そしてすべての語りが見開き二頁で開陳され完結していること、この二つに感心した。このスタイルに収めることには取材・構成者のご苦労があったと思う。以上はこの本のスタイルについて。以下はその内容につき簡単にまとめて述べる。岡野氏が語る、数値に置き換えられない「気持ち」(54頁、「気持ち」をみんな忘れてる)、そこにこそものづくりの核心があるようだ。それはおそらく手先の器用さや意識的な工夫だけではなく、日々の仕事を通じてその人の深層意識にまで修練がおよばなければ職人としては未熟ということらしい。しかしそれはものづくりだけではなく人間そのものの秘密にまで触れるものではないか、と考える。つまり、そのような言葉(つまり意識)や数値(設計図)だけでは表現できない全的な人間の力を鍛えることが肝心だと岡野氏は語っているようである。貴重な経験を語ってくださった岡野氏と、取材・構成者の加賀谷貢樹氏の貴重なお仕事に感謝したい。 他人と違うことをしなければ生き残れない 関連情報