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第二次世界大戦から東西冷戦を経由し、ソ連邦の崩壊とその後の混乱で閉じたあの戦争の世紀を、「近代兵器」として運命を翻弄されたイヌたちに焦点を当て、ありうべきもうひとつの20世紀史として描き出した傑作。
物語は1990年代のとある冬の日、シベリアの森の中で、防寒具に全身を固めた若い男が、人里離れた一件の人家に辿り着くことから始まる。
この近過去の物語を横糸に、そして、1943年のアリューシャン列島、キスカ島/神鳴島に日本軍が置き去りにした四頭の軍用犬たちの血統が紡ぐ数奇な運命を縦糸にして、二つの物語が交互に縒られ、USA、ソ連邦/ロシア、アラスカ、日本、韓国、朝鮮、中国、ヴェトナム、メキシコ、ハワイ、サモア、アフガニスタン、等々、舞台を転々としながら、米軍、KGB、ヤクザ、各国のマフィア、ゲリラといった人間たちとイヌたちのそれぞれの流血と生存の戦いが一大絵巻として織りなされていく。
後半、二つの物語は一気に収斂し、クライマックスでの沈黙の市街戦と、そこから一転しての殺戮劇(それはさながらパリ・コミューンの顛末をも想起させる)、そして。
生き延びた者たちは我知らず、この物語の円環を閉じんとするだろう。それがどのようなものであるのかは、是非一読して確かめて欲しい。
「人間」の登場人物たちには徹底した観察者の視点から記述しながらも、イヌたちには「お前」と呼びかける語り手によるナレーション(ときに脱線したかのように、当のイヌたちと物語の中で対話を始めるのはご愛敬か?)が地の文を支え、無駄のない硬質な筆致で進むストーリーは、読者を飽きさせることなく一気に読ませる。
内容、タイトルはもちろん、装幀も秀逸。
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とにかくやさしい。自分が、すさんで、中指立てる寸前
に、聞くとよい。
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