夜になるまえに―ある亡命者の回想 (文学の冒険シリーズ)
キューバが生んだ天才作家の傑作自叙伝。
J.シュナーベル監督、J.バルデム主演で映画化もされた。
実父が出奔し極貧に育つが、カストロ率いる革命政府の奨学金で学問を学ぶ。
しかしその救いの政府は、アレナスの同性愛嗜好を理由に迫害に転ずる。
マチズムに囚われた政府当局に何度も牢獄にぶちこまれながらも、
あらゆる「途方もない性的冒険」を繰り返しつつ逃げ延びるアレナス。
そうした逃亡生活でも「夜になる前に」公園の茂みで書き綴らねばならない。
いいようのない悲哀。だがそこには豊かで強靭なユーモアがある。
あまりにも純粋な性=生への渇望。だから生き続けられる。
マリエル港事件で難民のうねりとともに米国に逃れはした。
しかし「自由の国」にアレナスの求める自由は果たして存在したのか。
最も憎んだ父=フィデルが統べる祖国。
離れて味わうキューバ的性=生の喪失。
そしてエイズの発症と絶望と自死。
濃厚なる性的生を生きるのに不可欠な肉体の衰滅。
それが、このピカレスク的自伝の主人公にとっての悲哀だったのか。
夜になるまえに [DVD]
ホモセクシャル、キューバ国、カストロ、革命、弾圧、投獄、亡命、エイズ、並べて見るとレイナルドの波乱万丈な人生を容易に想像できる。しかし実際は想像以上の厳しい人生だったであろう。何事にも真正面から対峙したレイナルドに感動した。シビアなストーリーにもかかわらず、思わず笑ってしまう場面も多い。「ホモセクシャル」は大きなキーワード。
ショーン・ペン、ジョニー・デップの出演は特筆に価する。特にジョニー・デップの二役については、本作品の価値とは全く別にして賞賛したい。それを自分の目で見ることを是非お勧めする。それによって本作のすばらしさも同時に体験できるものと思う。
夜になるまえに [DVD]
ジョニー・デップが好きなので、俳優目当てで買いました。
少ししか出て来ませんが、充分に存在感があり、ストーリーの中で重要な役割だったのでうれしかったです。
小説家である主人公の人生を映画化していますが、ゲイであるゆえの様々な苦悩を切なく表現してあり面白かったです。
ゲイからみた男の美しさを感じさせ、個人的にベスト8に入る映画でした。
夜明け前のセレスティーノ (文学の冒険シリーズ)
全編にふわりと浮遊感が漂い、地に足はついていかない。
文章は小気味よく、夢心地で、焦点は定まるようで定まらない。
追いつけそうで追いつけない。つかめそうで掴めない。
とても長いときを一瞬ですぎてしまったような、またはその逆、一瞬の出来事がとてつもなく密度をもっておしよせてきたようなそんな文章だ。
作者が、本というものを、文章というものをいかに愛し、いかに戯れたか。この本はそれを追随させてくれる。
夜になるまえに ― オリジナル・サウンドトラック
ずっと見損なっていた映画を相当遅れて、やっと観ました。ジュリアン・シュナーベル監督作品3作中ではベストだと思いました。そして、音楽もベストでした。
特にキューバン・ミュージックのファンではありませんが、絶妙な陽気さと哀愁のミックスチャーは、当時のキューバを音楽自体が映画の主題を物語っていて、素晴らしい!
単に、あの映画に対する選曲が良かっただけかもしれませんが・・・。
逆に、音楽は音楽で完全に独立したパワーをもっており、音楽を聞いても映画のシーンを思い起こさせない。
通常映画は、映像と音楽が表裏一体になっており、どちらかが欠けると、どちらかだけだと、その両方の「マジック」が失われる。
何度も、それには失敗した経験があり、今回は成功!でした。
映画の内容と同等にその音楽も優れていたと思います。
そして、原作も読みましたが、敢えてあの作品を映画化したシュナーベルを監督として尊敬します。おそらく、一作家として原作者に対する深い共感と愛情があったからできたことでしょう。
その深い思いが、音楽に至るまで徹底的にこだわったことが伺える一作そして一枚です。