私は貝になりたい―あるBC級戦犯の叫び
本書は一編の著作というよりは主にB級戦犯(通例の戦争犯罪)としての加藤哲太郎氏が戦争の矛盾を世界に訴えた短編集と言えます。そして映画「私は貝になりたい」を遙かに超えた戦争の本質と日本の犯した罪を内側から突き上げる作品といえるでしょう。
「天皇陛下よ、なぜ助けてくれなかったのですか。」から始まり「けれど、こんど生まれ変わるならば、私は日本人になりたくありません。... 私は貝に生まれるつもりです。」という叫びは赤木曹長という名を借りてのフィクションですが、しかしそれはまさに加藤氏が巣鴨プリズンで感じた日本社会に対する矛盾であり、一個の人間としての平和を訴える声ではないでしょうか。
加藤氏は慶応大学卒業後、徴兵されその語学力を買われ俘虜収容所勤務となりますが、同時に「捕虜取扱いの国際条約(ジュネーブ協定)」を熟知した国際人でもありました。その彼が直面するのは日本軍や憲兵隊の愚かな見識と対峙することにであり、結果として彼自身B級戦犯に追い込まれてしまったのです。この意味では加藤氏の境遇は、A級戦犯としての広田氏(落日燃ゆ (新潮文庫))と共通するところがあるとさえ感じさせられます。そして加藤氏はさらに「私たちは再軍備の引き換え切符ではない」において、戦犯釈放運動がある意味で感傷的な日本人の戦争犯罪を忘れたい心の現れであることを痛烈に批判し、BC級戦犯が一種のステレオタイプとして位置づけられることを警戒しているのです。
戦時中の日本軍の捕虜となった将兵は35万人にのぼりますが、このうちイギリス、アメリカ、オランダ、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ人捕虜15万人のうち28.5%が劣悪な環境、暴行、強制労働などで死亡しています。これが異常に高い数値であることは同様の死亡率がナチスドイツにおける捕虜の7%、シベリアに戦後拘留された日本人捕虜の10%であることをみると歴然としています。)(BC級戦犯裁判 (岩波新書)参照)加藤氏の著書はその内部告発ともいえる勇気ある文献として、また日本人の良心の声として永遠に記憶されるべきでしょう。
一端は死刑判決を受けながらの囚われの身で、その高い見識から戦争に内在する残虐性、事実としての戦争犯罪を糾弾する加藤哲太郎氏の真摯な姿勢に心を打たれます。そして一人の日本人として戦争という大きな過ちを決して繰り返してはならないと思うのです。
私は貝になりたい スタンダード・エディション [DVD]
昔ドラマや映画でフランキー堺さんが演技していたのは知ってましたが、内容的な事は殆どしらないで、今回映画館へ行って見ました。
事前に中居君のエピソードや俳優さんたちの意気込みなんかをTVで放送されて、それを観てから放映を見たのですが・・・
前半・中盤・後半、大まかに分けて3回泣けるシーンがありました。
観てもらった方、これから見ようと思う方いらっしゃると思いますが、
この映画(脚本)絶対に日本人イヤ世界の人達は忘れちゃいけない事だと思いました。
軍事裁判の有り方、戦勝国が負けた国の軍人・兵隊を罰するという事・・・。
民間人が兵隊に行き敗戦しその裁判で死刑・・・むやみに敵国の兵士を殺した訳でもなく、B級戦犯で死刑は理不尽です。
主役の中居君はやはり凄い。
スマップの中居君とは全然違う迫力と目力・・・。
お父ちゃんの目、人を殺さなければいけない目、憎しみの目、悲しみの目、悔しい目、尊敬する目、愛する人を見る目、そして最後の最後の目・・・。
どの目も印象強い目で観る者を圧巻した。
今話題の草剪くん、つるべさん、ピン子さん、石坂さん、六平さん、奥さん役の仲間さん、皆さんがそれぞれ合った役でドンピシャって嵌ってた。
映画を観てもDVDを買って残しておこうと思った映画です。
私は貝になりたい スペシャル・コレクターズ・エディション (初回限定生産) [Blu-ray]
本作は、福澤諭吉をルーツに持つTBSのサラブレッド、福澤克雄監督の作品だ。TVドラマでは異彩を放つディレクターだが、やはり映画本篇、それも橋本組のリメイクが第一作、というのは厳しかったのではないか。脚本は橋本忍のオリジナルをほぼ踏襲しているので、安心して観ていられる。ここに変な脚色をしなかったことは評価できるのだが、唯一、仲間由紀恵扮する妻が、同じく橋本組の傑作「砂の器」(松竹映画の方ね)ばりに吹雪の中を歩くシーンだけは、何か余計だったかな、と思う。主題はそこにないからね。巣鴨プリズンがサンシャインシティの場所だった、ということを知らない人も多いと思うが、隅の一角、小公園になっているところが、豊松ら戦犯の刑が執行された処刑場の跡地だ。本作で何かを感じ取ったら、現地へ行くのもよい。そこから見上げるサンシャイン60の建物は、よく言われるように「墓石」に見える。中居正広は本当に「いい人」感が出てしまい、フランキー堺のいいかげんさや、表裏の感情の出し方には及ばなかったが、善戦していた。でもあんなに戦争は嫌だ、という感情を戦時中から抱いていることは考えにくく、そこは現代の戦争観だと思う。特典のキャンペーン映像は笑えます。星3つ。
私は貝になりたい スペシャル・コレクターズ・エディション (初回限定生産) [DVD]
本編は名作といっていい作品です。演技も素晴らしい。中居君のファンでなくても楽しめますし、中居君のファンの人はこれを見て戦争の事を知ってほしいです。
特典DVDはすごいボリューム!こんだけ入ってこの値段は安いです。映画をより深く知れますし、中居君の頑張りがすごいと思います。他の俳優さんたちも出てますので、初回限定版をオススメします!
私は貝になりたい (朝日文庫)
過去、ドラマなどで、「私は貝になりたい」の主人公を、フランキー堺(敬称略失礼)、所ジョージが演じたことは知っていた。
若かったもので、ほとんど記憶にない。
映画で中居正広が、主人公を演じると知って、おおよその話は知っていたが、このシナリオ本と、「私は貝になりたい―あるBC級戦犯の叫び/加藤哲太郎」を取り寄せて読んだ。
召集礼状1枚で、自身もわからない戦地に兵士として送られる一般庶民。
上官の言葉は、天皇陛下の言葉とも言われ、殴られ、蹴られ、無理難題を押し付けられてきた二等兵の話を、ドラマで観、本で読んできた。
主人公、豊松もその1人、上官の命令で捕虜を処刑したに過ぎなかった。
シナリオだから、小説のような文章はない、短いト書きがあるだけ。
でも、それが、想像力をかきたてた。 豊松が、尋問の中で言う、 「日本の軍隊では、二等兵は牛や馬と同じなんですよ」。 外国人捕虜に、ゴボウを食べさせて、「木の根を食べさせられ虐待された」と、重労働の刑に処せられた戦犯も居た。
豊松の奥さんは、子供を背負い、夫を救う嘆願書を集め、土佐から夫に、その嘆願書を見せ、 「サイン(署名)してくれた時、泣いたわ」 と言う。
夫婦の会話を読み、できることなら、本当に、豊松を減刑にしてあげたい、家族の元へ返してあげたいと思った。
私にも夫がいる、時代が時代なら、夫も戦争にとられ、生きて戻っても、こうして、戦犯として刑を受けることがないとは言いきれない。
原作の加藤哲太郎は、マッカーサーに助命嘆願をして絞首刑をまぬがれている。
豊松も処刑して欲しくなかった。
「海の底の貝になりたい」
なんて寂しく逝って欲しくなかった。
ラストの豊松の言葉は、加藤哲太郎にしかわからない、どうにもならない時代の叫びのように感じられてならなかった。
私は、今日、これから、映画を観ます。