荒廃する世界のなかで――これからの「社会民主主義」を語ろう
歴史の振り子の中で、私たちがかつて選んだ、国家によって市場の失敗に対処するという、より賢明な選択肢を、貧困をはじめとするさまざまな社会問題が一挙に再来する今、改めて私たちに提示する本。
社会疫学の圧倒的なエビデンスが示すように、私たちの幸福は、(一定の先進国において)経済的なゆたかさではなく、その国の格差の小ささに依存する。つまり、経済成長か、心の豊かさかというような、二択の問いはニセの問いである。新自由主義そして新古典派経済学が、私たちを誘導してきたこの30年間、このようなニセの問いに、私たちはとらわれてきた。ジャッドは、この30年間、金融資本主義が「自由」の名を借りて、人々の生存の自由すら奪ってきたことを描き出す。要は、市場は失敗するのだ。
本書は、この失われた時間を取り戻すための、警世の書である。
歴史家であるジャッドは、「裕福な人がますます裕福になる手立てを講ずるだけでは、資本主義は立ち行かなくなる」というケインズの見解を政治思想として、欧州を主導してきたのが社会民主主義であり、アメリカの「偉大な社会」もまた、同様な思想に基づいていたことを指摘する。そう、ジャッドが説くのは、この30年間、その魅力を伝えることを怠ってきた、社会民主主義を再発見することである。
東日本大震災の後、私たちは「一つである」と感じ、「一つでなければならない」と感じた。しかし、新自由主義が推し進めてきたのは、私たちは「一つでない」からこそ、つまり、不平等があるからこそ頑張れるのだという、イデオロギーである。本書は、3.11後、このイデオロギーを乗り越えるために私たちに贈られた道標である。
NINE QUEENS 華麗なる詐欺師たち [DVD]
どうしても見たくて、以前、英語字幕DVDで鑑賞した。
日本語字幕版発売とは夢にも思わなかったが、これは嬉しい限りだ。
脚本・初監督のファビアン ビーリンスキーが冴えている。
アルゼンチンで大ヒットを飛ばしたコンゲームもので、ブエノスアイレスならではの物語と言える。
どいつもこいつも胡散臭くて怪しすぎて、しっかり用心して見ていたにも関わらず騙されちゃうんだが、
これが爽快なんである。
副題?としてついている「ガストン・ポールス」ももちろん主演と言っていいが、
これはなんといっても「リカルド・ダリン」だろう。
この胡散臭いおっさんは、作品が異なれば知的で物静かな男も演じるから驚きである。
フェビアン&リカルド・ダリンで作った2作目。「El Aura」も高い評価を受けている作品で、
これも日本語版で出してくれたらと願うばかりだ。