Kraftwerk: The Catalogue Box Set
アナウンスから5年。忘れた頃にやって来た感のあるクラフトワークのデジタル・リマスターは想像を上回るものになった。心地よい音域の広さと、こんな音入ってたかなと思わせる解像度が兼ね備わった驚異の出来映えは、どこか感触的にビートルズの2009リマスターに似ている。(ビートルズも4年かかってるし、関係あるのかな?)
今回のリマスターで何よりも特筆すべきはS/N比の高さだろう。70年代中期に録音された「アウトバーン」や「放射能」でさえ全くと言って良いほどテープノイズが聴こえない。そのためか音に異様なほど鮮度があり、作品そのものの普遍性をも浮き彫りにしているようだ。その他のアルバムもまさに磨き上げられたといった感じに生まれ変わっているが、意外なことに最新録音であるはずの「ツール・ド・フランス」は中でも際立ってリマスター効果をあげている(リミックスかと思うほどに)。〈90年代テクノ風な感じ〉は払拭され、むしろ「コンピューター・ワールド」の音に近づいたような気がする。若干柔らかくなったとでも言おうか。そして音がクリアになったことで、細部にわたり(空間処理も含めて)一分の隙もなく綿密に曲が構築されていることがはっきりと分るようになった。発表当時はまさかの驚きばかりが先行し、リリースされたことに意義があるように感じられたこの復活作ではあるが、6年後にこのようにじっくりと本腰を入れて聴き入ることになるとはよもや思いもよらなかった。マスタリング技術の飛躍的進歩には驚くばかりだ。
自分の手元に届いたものは、NTSCのリージョンフリーでした。普通のDVDプレーヤで視聴可能です。
ただし、これは他の方のレビューにもありましたが、DISK1とDISK2の内容があべこべでした。輸入盤だからまあ仕方ないやという広い心で受け止めましたが、そういうのが気になる方は要注意です。
内容は素晴らしいの一語に尽きます。
貴重なライブ盤との呼び声が高いですが、もうシーケンサを回して同期をとる時代じゃないし、彼らのスタイルではスタジオ録音もライブ演奏も大きな違いがないといえるため、僕にとってこの作品は00年代型リアレンジ・ベスト盤です。KRAFTWERKを聴いたことがない人には「THE MIX」が一番のお勧めだと思っているのですが、「MINIMUM-MAXIMUM」はそれと同じ意味でお勧めです。「THE MIX」を好意的に受け止められる人には最高のパフォーマンスでしょう。
国内盤よりぐっと安く入手できるし、ファンならこれは持っていてもいいものじゃないかと思いますよ。
Minimum Maximum [DVD] [Import]
絶対にライブの方がかっこいい。1977年初来日の初公演、中野サンプラザの時も、1998年赤坂BLITZでの突然の来日公演の時も。自らの曲をセルフミックスしてあのコントロールルームのようなステージで繰り広げられる唯一無二のライブ。とにかく「かっこいい」のだが、なにせ音源や映像が全くない為(ブートレック除く。もちろん音は×)パンフや雑誌を読み返し僅かな写真で我慢していた(涙)。そんな中、念願叶ってやっと出たKRAFTWERKのライブDVDがこれだ。VAIO4台がメインで以前の機材に囲まれたステージングでは無いものの、選曲はベストと言えるものだし、背景に写し出される映像も堪能できる。更にマニアにはたまらない映像として手元のアップがある!何をしているのかが客席からは殆ど分からなかったが、VAIOをメインに各メンバーがMIDIキーボードやコントローラーを操作しているショットは思わず感動してしまった(但しフローリアンは最後まで何をやっているか分からないです)。そして、本人達よりロボットの方が動いています(笑)。ファンの方々ならずともテクノポップの王道を脇目も振らずひたすら進んで来た彼等の集大成を御覧下さい。
更に願いが叶うなら、赤坂BLITZの時のライブ映像が見てみたい。幕が締まり「MUSIC NON STOP」とディレイのかかった声が響く中、会場の明かりがついても殆どのお客が残ってアンコールを叫び、公演終了のアナウンスが流れると、歓喜の拍手が沸き上がった、みんながKRAFTWERKを求めていたあの感動的なライブを…。是非とも昔の映像もリリースして下さい。
クラフトワーク ロボット時代
著者のいたテクノバンド、クラフトワーク内の不和や、派手な女性遍歴を読むのは、彼らのパブリック・イメージを信じていた身として夢が壊れるようだった上に、くどい。そんな描写が続くと、読むのを止めようかとさえ思った。 それよりもむしろ、仕事で出会った人や裏話をユーモラスに綴った所の方が、楽しく読めた。例えば、フリオ・イグレシアスとの対決には大笑いしたし、ヘルムート・バーガーのくだりは、その人となりをよく表していた。そして『人間解体』のロボットや、『ヨーロッパ特急』のジャケット作成の裏話は興味深かった。 新プロジェクトの宣伝や、アジアの国々に対する複雑な感情をそのまま書いているところ、著者は自分で思うより率直かつビジネスライクな人なのではないだろうか。好悪が分かれるだろうが、私はいいと思う。