中井英夫全集〈1〉虚無への供物 (創元ライブラリ)
好き嫌いはあるにしても、日本の探偵小説を語る上で、はずすことのできない一冊。その後の推理小説に大きな影響を与えている。
なお、本書と並んで論じられることの多い「黒死館殺人事件」(小栗虫太郎)「ドグラマグラ」(夢野久作)と比べて圧倒的に読みやすい。
新装版 虚無への供物(上) (講談社文庫)
私が持っているのは前の版のですけどね。頭が青い薔薇の人がギターかなにかを弾いているという妖しいヤツ。
あの表紙好きだったんだけどなぁ。。
読んだのは大学一年のときですから今から10年ちょっと前くらいですけど。
最初のゲイバーのところから、すごい引き込まれて、徹夜で一気読みしたのも懐かしい思い出です。
何回読んでも色々な解釈ができるのがこの作品の良いトコロだと思います。時代の空気も楽しいし。
ただこの作品、読む人によって相当反応が違うのもたしか、私も当時「この本凄いよ!」って言って本好きの親友に貸して「どこが良いのか全然わかんない」って言われて大論争したものです。
最後のカーテン描写が冒頭のシーンと繋がってきて、幕がおりた劇場のような気分にさせられるところとか、私はなんか泣きそうだったんですけどね。(あああ、すごく練り上げられた作品だったんだなぁ…って思って)
作者は、いつか「虚無への供物」以上の作品を書く、書く、といって、結局果たせず亡くなられた、と何かで読んだ記憶があります。(私はこの本を一冊残すだけでも、作家としてすごい功績だと思います。)
書いた本人からして重荷にすら感じる作品…それが本作なのでしょうね。
「虚無への供物」は様々な分野に該博な知識を持つ作者が、構想、執筆に10何年もかけ、練りに練った大作です。
ようするに、読む方も覚悟がいるのでしょうね。私もたまに読み返してみて、いつも新しい発見がありますし、未だに良くわからない部分もあります。
そういう意味ではパッと読んで、わかったり、楽しいという本ではないですけど、読んでみて欲しいな〜と思います。
…で、前述の親友が最近の理不尽な某事件について話していた時に、ぽつりと「…まさに虚無への供物だね。」っと呟き、さらに「そうか、そういうことか。。」と言い。「あの本、今度また貸して」と言いました。
…そういう本です。。