ちあきなおみ・しんぐるこれくしょん
ちあきなおみって言うと一般的には“「喝采」の人”“コロッケのモノマネの人”ってことで括られてしまうんだろうけど(それも今の若い人はわかんないか)、僕はどっちかって言えば、「X+Y=LOVE」とか「四つのお願い」のような男女のコミカルな関係を描いた、大人の洒落たラブソングが好きである。
♪Xそれはあーなた、Yそれはわーたし で始まる「X+Y=LOVE」は、多分X染色体、Y染色体からアイデアを得てるんだろうけど、だとすればX=わたし(女)、Y=あなた(男)だよなぁという気もする。この曲を聴くとWXYの文字を使って女体を落書きした小学生の頃の思い出がオーバーラップしたりもする。当時は大人と子供のあいだに今よりも明確な区分があったし、“大人だけの歌”ってのが確実に存在していた。
ちあきなおみだけじゃなくて水原弘の「へんな女」とかね。水原弘もちあきなおみと一緒で「黒い花びら」で括られちゃってるのが悲しい。日吉ミミの「男と女のお話」とか初期の研ナオコ(例えば「うわさの男」)なんかも“大人の洒落たラブソング”だと思う。まあ、昭和40年代は男女の交わりも今ほどドライじゃなかったんだろうな。だからコミックソング風に茶化しながら、お願いを託したり、方程式を夢みたりするっていう。
このCDにはタイトルだけでも時めくような、歌謡曲のエキスが存分に詰め込まれている。まさに必聴「おとなの歌謡曲」である。
黒い花びら (河出文庫)
私にはまだまだ空白の部分の多い人、という読後感でした。
さらっと全体を流しているのは、読んでてスムースで面白かったです。
ただ、もっと執拗に取材して本にして欲しかったと正直思います。
酒場で長時間、何を話していたんだろう?
そんな事を更に思ってしまいました。
スーパーベスト 水原弘
99年発売の『全曲集』から「雪国」「素晴らしい人生」「お嫁に行くんだね」「港はまだ遠い」(これがラスト・シングル)の4曲を省き、曲順を入れ替え再構成したアルバム。ジャケット写真は、シングル「君こそわが命」の時に使用されたものと同じ、青を背景にしたおミズの横顔。収録曲は、黒い花びら/君こそわが命/黒い落葉/愛の渚/慟哭のブルース/へんな女/女の爪あと/遠くへ行きたい/恋のカクテル(モノラル)/黄昏のビギン/好きと云ってよ/マイ・ウェイ、の12曲。『全曲集』同様、「黒い花びら」など初期の楽曲は、ステレオで―「君こそわが命」ヒット後に―再録音されたテイクで収録。
今のオレと同じ年で亡くなった、ということもあって、近頃やけにおミズの歌が聴きたくなり、なかば衝動買いのように購入したけれど、これは大満足。12時間ものレコーディングを経て完成した伝説のカムバック曲「君こそわが命」などはもちろんだが、今回個人的に気に入ったのは、ボッサ歌謡、というだけでは表現しきれない深くてコクのある世界が展開される「好きと云ってよ」。大人のひとりGS「愛の渚」、聴いていると子どもの頃の思い出もよみがえって来るコミカルな“珍名曲”「へんな女」の2曲を作ったハマクラさんの天才ぶりにも、改めて敬服する次第(鼻歌みたいなノリで、肩の力の抜けた名曲を量産した彼は、やはり偉大だ)。そして、カラオケの席では蛇蝎の如く嫌われている「マイ・ウェイ」も、うまい人がしっかり歌えばこれだけのものになるんだ、と実感。オレの大好きなトム・ジョーンズ版に匹敵する出来だ。最高(おミズが和製トム・ジョーンズだというより、トムさんがイギリスのおミズなのだ!)。
歌詞カードの作者名のところに、編曲者のみ表示されていないなどわずかに不満もあるが、☆は5つ。
この星は、唯一無二である、おミズの歌声に捧げる。
全曲集
最近、村松友視氏の水原弘の評伝「黒い花びら」を読んだ。それを機に水原弘の歌を聞いてみようとこのCDを購入した。
昭和53年、水原弘は42歳の若さで他界した。
その頃幼稚園に通っていた私が彼を知ったのは、中学生の頃に聴いていたラジオから流れてきた「黒い花びら」だった。
「なんて甘く切ない歌だろう。」そして既にこの世の人ではなかった事に「幻のスター歌手」の匂いを感じ、その事で自分の心の中で更に「黒い花びら」が際立って響いたのを憶えている。
CDを聞いた感想は、、、「黒い花びら」「君こそわが命」以外にビッグヒットに恵まれず、様々な路線での試行錯誤が伺えるが、素晴らしい事に全ての曲を見事に歌いこなしている。リアルタイムでは商業的には冴えなかったのかもしれないが、今聞いてみると水原弘という歌手は高いクオリティーでジャンルを選ばず自分の歌を表現できるオールマイティーな希少な歌手という見方ができないだろうか。
特に波乱万丈の人生を送っただけあって「マイ・ウェイ」は絶品!
ホントに42歳で亡くなってるのは残念。もっと生きていればもっと可能性があった様に思う。