第31作 男はつらいよ 旅と女と寅次郎 HDリマスター版 [DVD]
この作品も、なかなか味わい深い。「都はるみ」が「京はるみ」というスターの演歌歌手役を演じる安直さも今となっては笑えるものだ。さて、注目は都はるみこと、京はるみが、柴又のとらやにくる場面。彼女が、彼と復縁したという話を聞いたときの微妙に変化する寅さんの表情。彼女が歌う姿を後ろから、じっと見つめる寅さん。ここでも表情の微妙な心境の変化を見逃してはいけない。涙するのは、出発前にさくらの家に立ち寄る場面。菊池寛の「父帰る」とダブった。渡した3枚のチケット。ヒロシとさくら、寅さんの分の1枚は空席に。これが渥美先生の芸の奥深さなのである。エンディング、北海道に渡る寅さん。地元の納涼祭りで、テキヤの仲間たちと落ち合う。くだらないやり取りと、懐かしい面々。寅さん映画の脇役の常連たち。ルスツ高原の幌馬車。今となっては見られない観光地化する前の北海道。荒々しい大地が見せる束の間の夏。日本が伸び盛りだった頃の懐かしく美しい思い出。当時、売れっ子だった歌手を大胆に起用した、手堅いヒットを狙った楽しい1本である。
第10作 男はつらいよ 寅次郎夢枕 HDリマスター版 [DVD]
寅が結婚する、と大真面目で考えてみると、やはり髪結いの亭主が一番現実的ではないか、とそれこそ大真面目にかんがえてしまった。
ちまたではリリーが人気だけど、フーテン同士あぶなっかしいし、喧嘩ばかりで、まわりは気が気でないだろう。もちろん映画としておもしろいことはいうまでもないが。。。。。
もっともおなじ髪結いといっても風子のような半人前はいかん。
蝶子のような依存体質も寅にはしんどい。
したがって今作でのお千代坊が一番だ。
まず地元で開業というのがいい。バツイチというのも好都合。
幼なじみということで寅のことは知り尽くしているわけだし、世間体も問題無い。
それにしても八千草はかわいい。その後ずうっと柴又で髪結いしてたんだろうか。準レギュラーでも面白かった気がするが・・・
シリーズもようやく安定期にはいってきた。
第16作 男はつらいよ 葛飾立志篇 HDリマスター版 [DVD]
寅さんが最も苦手(?)とする勉学に挑戦…という筋書だが、やっぱりちょっとミスマッチだったかな、とも思う(制作側はその面白さを狙ったのかも知れないが)。
「寅次郎夢枕」(第10作)でも、大学の先生(米倉斉加年)をかなり極端に描いたが、今度も田所教授(小林桂樹)を面白可笑しく描く。ただ、これでリアリティが弱まってしまったような気がする。すべてをリアルに描く必要はないが、喜劇であるからこそ、リアルに描かなければならない部分があると思う。
それに、せっかく小林桂樹を出したのだから、もっと違う使い方はなかったのかと思う。面白い役も器用にこなす名優だが、演技の引き出しはもっと多い俳優であり、もったいないと思う。ただし、野球の後の宴会で歌い出したときのシーンは、流石だと思った。
マドンナにしても、今回はちょっと寅さんとかみ合わなかったような気がする。ファンとしては、失恋するのであれ、思いを寄せられて引いてしまうのであれ、マドンナとの心の交流を見たいと思う。
むしろ、前半のエピソード(桜田淳子)の方が寅さんらしくて良かったと感じた。