Raised in Captivity
ハードロックっぽいWETTONは聴きたいものの一つです。これに大人の落ち着いた雰囲気が合わさってとても素敵です!Palmer-Jamesとのコンビ曲はもはや微笑ましささえ感じます。常に新しい音楽を創りあげていくWETTONの才能と姿勢にはただただ感心し、聴き惚れるばかりです。ボーナストラックは欧米向きの曲(日本版は絆を感じさせる曲)を選んだのでしょうか。最後のデュエット曲に関しては、宗教的な実感の湧かない私には「そんなに深刻ならなくても…」という感想になってしまいます。その一つ前の曲はシンプルで真っ先に覚えちゃいました。
アルティメット・ゼロ・ツアー-ライヴ(Ultimate Zero Tour-Live)
このライブアルバムは2009年、John Wettonが参加し、UK30周年記念として催されたPoland公演を中心としてアメリカ、ロシアでのパフォーマンスを収録したもので、Eddieの言葉を借りればProgressive RockへのTributeの意味を持つものです。70年代プログレッシブロックの最後のヒーローであったUKの音楽的主導者、天才=Genius Eddie Jobson 率いるU−Z Projectの構想は、09年UKZ来日公演直後に六本木で公表され、そのわずか2ヵ月後に最初のライブパフォーマンスがアメリカ東海岸で催されました。この完璧な演奏は信じられないことですが、ニコロ・パガニーニのごとくライブが催される直前での短いリハーサルで調整したもの、つまり、それぞれの分野のハイテクミュージシャンにしかできない業を結集したものなのです。本アルバムでの選曲は参加ミュージシャンのJohn Wetton,Tony Levin,Trey Gunnの面々から、UKとKing Crimsonの作品を中心としています。JohnにとってもOne More Red NightmareやUKの複雑な楽曲は長らく自ら演奏し歌う機会がなかったのではないでしょうか。 クリムゾン本家において30年以上にわたって封印されていたエレクトリックバイオリンがフィーチャーされたそれらの楽曲は、ずばりオリジナルを上回る出来映えです!2010年のU-Z Projectの来日公演でも演奏された曲も多く含まれており、その記憶が鮮明に甦ります。
1979年、来日公演を元にリリースされたUKのライブアルバムNIGHT AFTER NIGHTは、ライブにおいてもプログレの真髄を体現していたUKを知るファンにとっては、選曲からCarrying No Cross,The Only Thing She Needs,そしてEddie,John, Terryのimprovisationがカットされ、ややポップな傾向の曲が前面にフィーチャーされたことから、編集に不満があったのは否めない事実でした。本作はちょうど、そのNIGHT AFTER NIGHTでカットされたそれらの重厚なプログレパフォーマンスが見事に収録されることとなりました。Marcoの忍者ドラミングのテクニックはすでに日本でも広範なファン層を形成し、Terryのドラミングを凌駕しています。(今年の来日公演でのMike Manginiとのダブルドラムスの掛け合いは今まで経験したドラムパフォーマンスで最高のものでした!)
そして、EddieのZero5は圧巻です。Poland公演では、ステージに設置されたpipe organでTHEME OF SECRETSの名作、Ice FestivalとTheme Of Secretsの序章まで見事に奏でて、続いてシンクラビアで創造した透き通ったクリスタルサウンドを響かせながら、きらめくピアノソロ、再度synclavierサウンドのTheme Of Secrets、Green AlbumのPreludeのピアノソロへと続いていくこの劇的な展開、実に美しい演奏です。
ラストは、UK時代に一度もライブ演奏されなかった名曲、Nevermoreのエンディングと、構成も本当に良く考え抜かれています。
本作を機にEddieが新たに立ち上げたNew Zealotsではすでに87年の未発表Album Theme Of Mysteryの楽曲の一部、Eddie アレンジによるBulgarian Women's ChoirのSilent Nightなども公開されており、今後も内容充実が非常に楽しみです。また日本にプログレに造詣が深いファンが多いことから3年連続して日本へ訪れる事となりました。11年1月にはPiano Oneの名作を含むsolo live event, Master Classがあります。
Eddie自身も本作を聴いた人たちの感想、リアクションをかなり期待しています。Eddie Jobson ForumやFacebook などを通じてレスポンドされることをお薦めします。
音質について
一つの方法として、タイムドメインライトとサブウーファーを同時につなげて聞くと、音の歪みやこもりが全然なくなり、音質の点もよく考え抜かれたレコーディングだとわかります。
Yamahaのサテライトスピーカーとサブウーファーの組み合わせでも試しましたが、音質は遜色ありません。それどころかKing CrimsonのGreat Deceiverの4枚組CDと比べましたが、それよりも迫力と臨場感のある音源だと思いました。
Back Against THE WALL ~PINK FLOYD Tribute Album~
ピンクフロイドの名盤を曲順にプログレの有名人が各自個性的に演奏していますが曲がいい性もありますが聞き応えあります。
ルビコン
前作は、本当に久しぶりの邂逅により、ジックリ作曲活動に精を出した事が伺われる、ゆったりした曲調とたおやかなリズムに支配された大人のアルバムという印象があった。
しかし本作は、バックバンドのメンバーとのライブ活動が非常に良い刺激を二人に与えたのだろう、バロック的な心洗われるメロディの美しさはそのままに、曲調には強弱のダイナミクスが、ダウンズの音使いにパーカッシブさが、ウェットンの歌心に溌剌さと透明感があふれ出している。Trk1のハードなパートとヒュー・マクドウエル(元ELO)の奏でるチェロが秀逸なオーケストレーションのパートの劇的な展開には感動する事間違いない。Trk2のコンパクトなポップスの味わいはあのエイジアの「アストラ」に入っていてもおかしくないほど。Trk6のワルツのリズムで歌われる流麗なメロディも素晴らしいし、産業ロック的に盛り上がるTrk8の煽情度も流石だ。
エイジアの再結成が、スタジオアルバム製作につながるか、今は不明だが、ウェットン・ダウンズの二人でも、ここまでの音世界を作り出せる事に改めて感動した。オリジナル・エイジアだったら、このアルバムの楽曲をどう料理したのか、そんなことを夢想しながら聴くと更に楽しめる作品だ。
ウェルカム・トゥ・ヘヴン
本人も「エイジア」を意識したと公言する、ジョン・ウェットンのソロ作。エイジアは、ウェットンの声域でも一番高いキーを使うのが特徴であるが、まさにそういう作りになっている。メロディーも「渋さ」よりは「甘さ」を強調。美しい音色のシンセも「エイジアです」という雰囲気を盛り上げる。
まぁ、バッキングの作り手が、ダウンズでなくウェットン自身なので、多少ラインが違うが、大体ファンが期待するエイジア・サウンドに仕上がっていると思う。曲のレベルは一歩及ばないが、イメージとしては「ALPHA」に近い。オリジナル・エイジア復活を熱望するファンは、これを聴いて欲求不満を解消してくれ!! 80%くらいは期待に応えてくれるはず。