夏休みの狩り
一気読みした。けっこう面白かった。
自分の子ども時代を思い出して懐かしくなったね。子どもがどう世界をとらえているのか、という描写がリアル。さすがは芥川賞受賞作家だ。
最近、わたしはミステリーばかり読んでいたから、こういう純文学系の小説は新鮮だった。
いちいち情景描写や心理描写がいいんだよね。ガジュマルの木の下で、とかさ。頭の中に夏の日の少年時代の風景が浮かんだよ。
あと、やっぱり女の子の描写が素晴らしかったね。ワンピースや浴衣を着ている純真無垢なかわいい女の子。これもまんま、わたしが少年時代に好きだった女の子のことが頭の中に浮かんだ。
ユーモアにあふれていたのもよかったね。主人公の少年はガキ大将に表面的には従順なんだけど、心の中では呆れていて馬鹿にしまくっているの。
ワガママでアホ丸出しのガキ大将に笑ったよ。ジャイアンみたい。ジャイアンと同様に仲間を助けたりするいいところもちゃんともってはいるんだけどね。まあ、でもあのガキ大将はやっぱりロクでもない奴だと思うけど。
少年時代の懐かしい思い出に浸りたい方におすすめの本です。主人公が住む町の美しい自然の描写も素晴らしかったです。
豚の報い (文春文庫)
『豚の報い』というタイトル、まずインパクトありますね。
物語の舞台は沖縄。だからというわけでもないでしょうが、味は濃いです。表紙のイラストも濃いですね。たとえるなら沖縄銘菓ちんすこうみたいなもんでしょうか?
前半、三分の一くらいでしょうか、文章が読み難いです。中盤以降は、読書側が慣れるのか文章がすっきりしているのか……
話の展開も(特に前半)、まさにユタ(霊能者)のお告げのような、支離滅裂のような、ちゃんと意味が通っているような……よく分からなさが充満しています。
四人の登場人物(というより三人の女)は豚の闖入にタマゲて、豚を食べて散々な目に遭い、最後には楽天的な気分になれたことを豚のおかげと認識します。
豚は悪魔であり、また神でもある動物です。人間もまた豚です。奔放に騒ぎ貪欲に食べまくる三人の女達の姿は、まさに豚舎そのものではないでしょうか? そういう意味では、宮崎アニメと通じるものもありますね。
ひと粒の宇宙 (角川文庫)
4000字という制限のなかで作者独自の小説による「宇宙」を作り上げるのはベテランクラスの作家であってもなかなか難しいようだ。もちろん、語り口の好き嫌いも読後感を大きく左右するのだが、「短編小説の名手」として定評のある小説家でも「幻想」や「夢オチ」「SF」「童話」に逃げていたり、いかにも断り切れずの「ヤッツケ仕事」と想像される作品もあるし、逆に失礼ながらあまりよく知らない作家でも巧くまとめきった作品もありまさに30人30様。いっそのことこの字数制限で一般公募してみたらどうだろうか?
呼び寄せる島
脚本家志望の青年を主人公に、風変わりな島の住民や島を訪れる人々との交流が綴られていきます。
登場人物どうしのやり取りが軽妙で可笑しく、ユニークなキャラクターがうまく描かれています。
読み終えた後、何か癒されるような気分になるのは背景に沖縄の偉大な自然があるからでしょうか。南の島に行ってみたくなる一冊だと思います。