ジョージ・ベストがいた マンチェスター・ユナイテッドの伝説 (平凡社新書)
晩年、あるテレビのトーク番組に出演した際、自身の往年の名プレイの数場面が
映されたあとで、ベストはこう言った。
「自分が死んだら、人びとは、〔数多のスキャンダルの〕たわごとはみんな忘れてしまい、
覚えているのはサッカーだけ、ということになるだろう。それはありがたいね」
「文化的アイコンとしての歴史的意義はともかく、ジョージ・ベストの価値はなによりも
サッカー選手としてのピッチ上のパフォーマンスにある」。
ジョージ・ベスト、それは例えば5人目のビートルズ、例えば破滅型の天才の雛型。
そんな彼の、「たわごと」ではなくもっぱら「サッカー」について、「ユナイテッドで一時代を
築いた一人の『ベルファスト・ボーイ』の生涯」を綴った評伝。
筆者は英文学の教授でありまた当然にサッカーフリーク、イギリス文化史を辿る過程で
ベストにぶつかり、本書の上梓に至ったのだと言う。
執筆にあたって特に関係者への取材を重ねたというわけではなく、これまでに本国で
出版された自伝や伝記を中心に、筆者の関心に従って組み直したのが本書。とはいえ、
巻末の数十冊の参考文献や映像リストが示すようにさすがに丁寧な仕事ぶり、単に
ベスト個人の履歴やイギリス・サッカー史のみならず、英国、愛国の同時代における
社会事情などへの言及もあり、きちんとしたクオリティを満たした一冊になっている。
ただ、この折り目正しい取り組みと文体、そもそもの企図ゆえに、例の「たわごと」の
面に関してはほぼ期待できない、もちろんスキャンダルに関しても一定の言及もされては
いるのだけれども。
色物としておもちゃ扱いするのもどうかとは思うが、フットボーラーとしての資質は
もちろんのこと、その裏側にある滅びの美、素質の無駄遣いへの眼差しがあってこそ、
ベストの人物像は成り立ち得るわけで、稀代の奇才をめぐる評伝としては片手落ちかな、
という気はしてしまう。
ただし、それでもなお、文献の参照をはじめ、筆者の仕事にその誠実を疑わせるものは
何もない。
名もなき挑戦 -世界最高峰にたどり着けた理由- パク・チソン自伝 (ShoPro Books)
いろいろ言いたいことはあるんですが、簡潔に感想言うと面白かったです。
私が無いだけかもしれないんですが、向上心がすごい選手だと思います。
文化等の違いも垣間見れるのでぜひ読んでみてください。