錯覚の科学
本書のタイトルは「錯覚の科学」ですが、原題は「The Invisible Gorilla and other ways our intuitions deceive us」であり、直訳するなら「見えないゴリラと、その他の、直感が私たちを欺く方法」というのが直訳であり、まさしく内容もその通りになっています。それぞれに共通しているのは、「見えているもの」は100%自明で理解できるはずだという思い込みが、人間の中にいかに根強いものか、という事です。そのために、私たちにとって非常に身近な事例が取り上げられており、読者はすぐに移入できることでしょう。本書の特徴はまた、脚注が非常に充実している、ということです。それゆえ、一般向けの単行本でありながら、学習用としても十分に利用できるクォリティを持っていると思います。また訳文も訳者があまり経験していないと思われる分野(ビデオゲーム等)では少々「?」な部分もありますが、全体として非常に読みやすく、「こなれて」います。私は心理学にはずぶの素人ですが、本書を読んで、特に認知心理学に非常に興味を持ちました。そういうきっかけとしても、本書は役に立ってくれることでしょう。お勧めいたします!