Miss Little Havana
本作はグロリア・エステファンとして11作目、マイアミ・サウンド・マシーン時代から通算して14作目のアルバムです。
私は現物が届くまでジャケットのデザインを一切知らなかったのですが、まずCDを手にとってびっくりしました。
意図的に安っぽくデザインした感じのポップさで、自分が本当に注文したのかと疑うくらいに従来のグロリア・エステファンのイメージからかけ離れています。
前作の「90 Millas」も紙ケースでしたが、おそらく意図的になのでしょうが、今回は前作のケースよりも安っぽく作られています。
但し、歌詞カードはちゃんと収められていました。
そして曲を聞いて2度目のびっくりを味わうことになりました。
あえてアルバムのタイトルに「Havana」という単語を持ってきたところから、郷愁がたっぷり漂う曲群をイメージしていたのですが、それとは真逆のリズムを強調した曲作りになっています。
歌い方はマイアミ・サウンド・マシーンの頃に若干戻ったような印象を受けましたが、それでもやはり曲のイメージは従来のグロリアらしさを感じさせません。
私の中にあるなんとも言えない受け入れ難さが不安になって、海外の評価を覗いてみたのですが、評価は良し悪しの両極に分かれるようです。
傾向として「ラテン音楽」という括りでこのアルバムを聴く人は高く評価し、「グロリア・エステファン」という括りで聞く場合には評価が下がるようです。
1998年に「gloria!」をリリースしたとき、「これはグロリアが歌う曲ではない」(それでも「Oye!」は高く評価されていましたが)といった評価を散見したのを覚えています。
私はテクノ/ダンス系の曲が好きなので、当時は多少の違和感を覚えながらも「gloria!」を素直に受け入れることができました。
その音楽ジャンルに馴染みがあるか、あるいは従来のアーティスのイメージに固執するかで評価が別れるということを今回も繰り返すのかもしれません。
前作の「90 Millas」ではオーソドックスにラテンのメロディに回帰していたの対し、本作ではラテンのリズムに回帰したというのが私なりの拙い解釈です。
ただ、リズムを強調するのであれば、私としてはマイアミ・サウンド・マシーン時代の突き抜けた明るいリズムを望んでしまいます。
ぜひ他のファンの意見を聞いてみたいという気分にさせられた作品でした。
ハバナ・ベイ (講談社文庫)
実力は折り紙つきなのに、どうもM・C・スミスの日本での扱いは低い。
代表シリーズであるアルカージ・ワシレヴィッチ・レンコを主人公にした作品群は、
実に4つの出版社を渡り歩いている。
つまり、1作ごとに変わっているわけだ。
早川から「ゴーリキー・パーク」、新潮から「ポーラー・スター」、
一番の鬼子扱いなベネッセから出た3作目「レッド・スクウェア」、そして、今回の「ハバナ・ベイ」は講談社。
そろそろ安住の地を提供してあげてもいいんじゃないか?
地味だが、堅牢、充実した読み物を提供してくれる作家なのだから。
これまで活躍してきたグランドとは真逆の、北回帰線より下の地で捜査を開始するレンコ。
場所や気質は違えど、根底に流れる物はどこの国家でも不変なのかもしれない。
ラムやシガーの国の物語だが、ここはウオッカを飲みながら読みたい。