プロ野球一球速報

ファミスタ

+ 赤頭巾ちゃん気をつけて (中公文庫) +

赤頭巾ちゃん気をつけて (中公文庫)

庄司 薫
おすすめ度:★★★★★
最安値はこちら!

Amazon.co.jp



高校生や大学生に読んでもらいたい
おすすめ度 ★★★★★

 日比谷高校3年生の薫くんは1969年東大入試中止のあおりを受けて、どうしたものかと日々を過ごしている。2人のお兄さんは東大法学部。下の方のお兄さんに「悪名高い法学部は何をやっているのか」を尋ねたら「なんでもそうだが、要するにみんなを幸福にするにはどうしたらいいのかを考えているんだよ。全員がとは言わないが」とえらく真面目に答えて、薫くんに法哲学の本とガリ版刷りの思想史の講義プリントを貸してくれる。薫くんが夢中でそのプリントを読んだそのすぐ後で、兄と2人で銀座を歩いていてその思想史の講義をした教授にお会いする。そこで先生は気軽に2人をお茶に誘い、話が弾んで、食事、お酒と夜中まで話が続いてしまう。そこで薫くんは以下のように感じる。

 「どう言ったらいいのだろう、たとえばぼくは、それまでにいろいろな本を読んだり考えたり、ぼくの好きな下の兄貴なんかを見ながら、(これだけは笑わないで聞いて欲しいのだが)たとえば知性というものは、すごく自由でしなやかで、どこまでもどこまでものびやかに広がっていくもので、そしてとんだりはねたりふざけたり突進したり立ちどまったり、でも結局はなにか大きな大きなやさしさみたいなもの、そしてそのやさしさを支える限りない強さみたいなものをめざしていくものじゃないか、といったことを漠然と感じたり考えたりしていたのだけれど、その夜ぼくたちを(というよりもちろん兄貴を)相手に、『ほんとうにこうやってダベっているのは楽しいですね。』なんて言っていつまでも楽しそうに話し続けられるそのすばらしい先生を見ながら、ぼくは(すごく生意気みたいだが)ぼくのその考えが正しいのだということを、なんというかそれこそ目の前が明るくなるような思いで感じとったのだ。そして、それと同時にぼくがしみじみ感じたのは、知性というものは、ただ自分だけではなく他の人たちをも自由にのびやかに豊かにするものだというようなことだった。つまりその先生と話していると、このぼくまでがそのちっちゃな精神の翼みたいなのをぼくなりに一生懸命拡げてとびまわり出すような、そんな生き生きとした歓びがあったんだ。そしてそんな自由でのびやかな快感に酔うと同時に、ぼくはうんと勉強して頑張って、いまにこの先生をワアーッと言わせてやるぞ、なんてえらく緊張してファイトを燃やしちゃって…」と文庫の改訂版の39ページにして、知性の飛翔を描写するこのすばらしい文章が披露されている。
 この文章を読んで、私の疲れていた知性も飛翔できた。知性って、こういうものですよね? 今の日本で求められているのは、こういう文章じゃないのかな? 庄司薫くんシリーズ全4巻、中公文庫で改訂版が2002年11月に発売になった。高校生や大学生に読んでもらいたいです。



みごとというしかない文学的達成度
おすすめ度 ★★★★★

これほど確信犯的に人生と自己を戯画化した若手作家はかつていなかった(そしておそらくこれからも)。俳諧的なみごとな文体と華麗な筋運び、軽妙洒脱な会話体とモノローグ。書くことと生きることとをどのように結び合わせるのか、著者自身の煩悶が主人公に高踏的に反映されていて、しかも構造的に良く練られた夏目漱石クラスの画期的4部作である。本4部作の良さがわからない読者は、残念ながらノーベル賞クラスの一流文学の素晴らしさの恩恵から一生無縁の人間である。三文娯楽小説を抱いて火葬場まで行けばよい。



黄色い女の子のよる魂の救済
おすすめ度 ★★★★☆

「色」シリーズの第1作。当時は大学紛争の真っ只中で、世間の価値観も揺れていた。主人公薫が通う日比谷高校は当時は東大進学率No.1を誇る名門校。だが、大学紛争のあおりで東大は1年だけ入試を中止し、薫は受験浪人に...。作中の薫と、本作を読んだ時の私はほぼ同時代・同年齢。安田講堂陥落の場面は同時進行でTVで観た。大学入学後、実際に紛争を味わった経験もある。この時代背景を知らないと、作中の冒頭の薫の(表面的な)明るい振舞いの異様性が理解できない。

本作を読む前に作者の「喪失」を読んでいた。硬質な文体と作者の頭の良さを誇示するかのような全体構成。それに比べ本作の軟弱さ加減は何だぁ、というのが最初の印象。小説家志望の薫の友人が女にフラれ、薫に「俺がこれまで書いた小説の中で、俺が何人の女にフラれたか分かるか」と尋ねると正確に答える薫。"冷静沈着"を絵に描いたような男、周囲にはそう見られているのだ。しかし、実際には薫も世間の状況の中、心の淵に落ち込もうとしていたのだ。

そんな中、ふと立ち寄った本屋で「赤頭巾ちゃん」を探している黄色いカッパを着た女の子に出会う。バリエーションが多い絵本の中で、薫は女の子のために適切な「赤頭巾ちゃん」を選んであげるのだ。この黄色い女の子と触れ合いで薫は人間性を取り戻す。大げさに言うと、ラスコーリニコフにも似た"魂の救済"を得るのだ。

ユーモア仕立ての文体は1種の韜晦であり、構成の巧みさは相変わらずだった事が分かる。中村紘子さんとの結婚後はすっかり髪結いの亭主になってしまったが、その後如何に文学界を眺めていたのだろうか。



多分今の若者には分からない
おすすめ度 ★★★★★

この本ほど「時代を背負い込んだ」ものはないと思っている。本質的なものはいつの世でも変わらないと思うけれども、この本は極めて特殊なシチュエーションで出てきたから。1969年東大入試がなかった時にぴったりと芥川賞をとり、学生運動のいい加減さが浮き彫りになり、「男は優しくないといけないんだ」と思い出していた当時に生きていないと分からんです。かく言う私は当時大学1年、その年代のバイブル的な本。映画にもなりました。映画のヒロインは「森和代」といいます。忘れがたい人物(装苑という雑誌のモデルさんでした)、彗星のように出てきてあっという間に消えて行きました。またこの作家も同様にあっという間に消えていきました。このような生き方の女優さんと作家も粋な生き方だと思っています。サリンジャーの真似といわれたので、サリンジャーも読みました。全然ピンときませんでした。こちらのほうが数段面白かった。




大変良く出来ています。
おすすめ度 ★★★★★

背筋にゾゾゾという感覚が走りました 。従来の伝統を引き継ぎつつ、バランスがうまくとれてます。
買って良かったと思います。


庄司薫 最新動画

庄司薫 の最新情報



KEI 庄司薫 倉田よしみ