石森作品と合わせて読みたい!おすすめ度
★★★☆☆
昔、20代の青年の頃、石森章太郎作の「家畜人ヤプー」を友人宅で読ませてもらい、
かなり興奮したことを覚えています。それで、急にもう一度読みたくなって、
検索したら、江川達也さんの劇画でリメイクになったようで、早速購入して、
第1巻だけ読了したところですが、どうも昔の興奮が蘇らない。石森氏の漫画調の
ヤプーとは違って、主人公の麟一郎の裸体はここまで書き込んでいいのだろうかと
思うほどリアルに緻密に描写しているのに、全く肉感を感じなくて、それに顔立ちが
あまりに不細工すぎて、過酷な立場にいる主人公に同情など微塵も感じられない。
それにひきかえ、クララもポーリーンも漫画調に可愛く書いてあり、どうも同じ画面にしては不釣合いな印象を受ける。
喩えるならば、小島剛夕(「首切り朝」)と二ノ宮知子(「のだめカンタービレ」)が共同制作したようだ(笑い)。
ハハハ・・・喩えが適当でなかったですよね。
とにかく、あまりに丁寧でテンポの遅い導入部の展開に、ちょっと面食らっています。
石森作品では、麟一郎に深く同情しながら性的な興奮を覚えたわけで、自分で自分を
分析すると、マゾヒストの傾向があるような気がしますが、是非とも、石森作品も
復刻本を出していただいて、あわせてこの江川版ヤプーももっと読んでみたいと
思っています。
すごい話やなーおすすめ度
★★★★☆
「家畜人ヤプー 原作沼正三 作画江川達也」2巻読んだ。
昔、石ノ森章太郎が描いた漫画・・くらいの認識しかなく読んだことも原作があることも知らなくて今回たまたま読んだら結構すごい物語やった・・。
いきなり2巻から読んだから間違いあるかもしれんけどおおまかなあらすじー二千年後の世界は女尊男卑の世界でしかも白人だけが支配してて黒人は奴隷黄色人種は奴隷以下の家畜。
というか家畜以下。セックス処理用や肉椅子、肉ベッド,肉洗面器といった扱いを受けている。そんな世界に現代からあるカップルがタイムスリッップしてきたというお話。
ちょっとSMチックでエロくてえげつない話です。そういうの好きな人は絶対おもろいとおもいます。字の量も相当多いので読むのパワーいります。
原作小説のほうは文学界ではかなり有名な作品らしいです。こんな話を50年も前に創ったというのもすごいなと思った。全巻、そして石ノ森版も読まねば!
江川的「精神史」のひとつおすすめ度
★★★★★
確か、『源氏物語』の巻末であったと思うが、江川氏の描く世界観について一定の方向性があるようなことを述べておられた。
それは、「日本人の精神」というテーマであり、『源氏物語』において中世を、『日露戦争物語』において近代を、『東京大学物語』において現代を、という内容であったように記憶している。
その言に照らし合わせてみれば、『家畜人ヤプー』という漫画は、「戦後」という日本の歴史の中でも特筆すべき時代を対象として「選択」された作品であるように思えてならない。
原作者・沼正三氏は、小説や漫画等の表現方法を問わず『家畜人ヤプー』に関わる作品に、戦争や戦後の体験から生まれたものであることを書いておられるが、優れた「サドマゾ文学」であったり「奇書」であることの評価もさることながら、敗戦を起点として変質していった「日本人の精神」を理解することにより、『家畜人ヤプー』の持つ意味を深く知ることができるように思える。
こうして見ていくと『日露戦争物語』『家畜人ヤプー』『東京大学物語』という作品は、全く違うジャンルを扱いながらも、近代以降の「日本人の精神史」を描いていることになり、原作を非常に忠実になぞっていく意図もここにある(変質させないがため)のだろう、と考ることができる。
善し悪しということではないのだが、個人的なことを云えば、『家畜人ヤプー』という作品に対して持っていたイメージ(漠然)が漫画によって、顔や背景や空間に至るまで「固定」されてしまった。「絵」の持つ力は絶大である。
「日本人として」という観点からぜひ読んで欲しい作品ではあるが、しかし、もちろんオススメはしにくい(笑)。