13巻まで見たわけではないので、まだ感想が固まってないというかんじです。ここや、その他の掲示板では、「読者を置き去りだ」などと言う方も見かけました。ただ私は難解であると言うことだけではなく、古典を読む前の肩ならしとしてもおそらくずっと、この本を手元に置き続けるでしょう。内容を心で反芻しては、考えることになるでしょう。そういう点では、難解な随筆に近い読み方です。何度読んでも、飽きない。当初のころのような今昔物語から、題材を得た夢枕氏の原作に沿った内容ではありませんが、どこまで創造がふくらむのか、その視線の先が気になります。でももう既刊で13巻だけ読んでないので、ちょっとこの先
話の収束がどうつくのか、心配でもあります。10巻で一区切りという読み方もできたかなとも思うので、11巻を読んだら13までは、一緒に付き合ってねという気がする構成です。
史実と伝説の狭間おすすめ度
★★★★★
歴史上、安倍晴明は85歳で亡くなったと記されている。
当時としては驚異的な長命である。
最後まで現役の陰陽師だったようで、藤原兼家(←あわわの人)やその子道長とのつながりも深かった。
そして、この「陰陽師」の晴明は、伝説化された陰陽師=晴明onlyではなく、
史実も追っかけて岡野氏の脳内で再構築されている。
そういえば晴明の前世の描写があるが、
前世が古代エジプトの最後の王だったかどうかは別問題(笑)である。
晴明は、都市を建設しまた呪術的に守護することを担わされてきた人だった、
という意味での引用ならなんとなく理解できるが。
(古代エジプトには優れた天文学と暦、古代ギリシャには数学があり、
都市建造とは密接に繋がるので)
史実と伝説、両方を織り交ぜながら突き進む岡野氏の陰陽師は、
よく調べて書いてるなぁと、いまさらながら感心し(呆れ)つつも、
やはり他の晴明本とは違う密度の濃さに惹きつけられる。
…読むのが大変ですけどね。
壮大なクライマックスに向けて胸が高鳴る!おすすめ度
★★★★★
11巻を読んだとき山岸涼子さんの「日出処の天子」の影がよぎりました。「日出処の天子」の厩戸王子は冷徹なマキャべリストとして、当時の現実では決して到達できない高度な政治的、宗教的理想を胸に、血みどろの政治的な闘争へとクールに介入していく神秘的な人物として描かれていました。しかし陰陽師の安倍晴明は政治的な側面は限りなく薄く、壮大な宗教的ヴィジョンを通して、平安の世に何か得たいのしれないシステムを打ちたてようともくろむ超政治的な人物として描かれています。岡野さんが深化させていった数秘論的世界観を軸に物語を展開していけば、諸星大二郎さんの「暗黒神話」、「孔子暗黒伝」のようなヴィジョンそのものを作品のモチーフにしてしまうまとめ方も考えられます。そのヴィジョンを物語といかに無理なく融和させるかが、最も難しい問題となっているはずです。
すでに晴明は自らを陰陽師ではなく「魔術師」と名のり、「時」をつなごうと画策します。数秘論的におおきな意味をもつギリシャ、そしてアレキサンドリア図書館!などが描写され、岡野さんがぎりぎりの賭けに出たな、という感じがして別の意味でも胸が高鳴ります。そして海からやってきた童満。その出現の仕方はボッティチェリの描くアフロディーテのようです。しかしはるかに暗く、怪しく、禍々しい妖気に満ちているアフロディーテ。絵の圧倒的な表現力においても、漫画史に残る最高到達点に存在しているこの作品のクオリティーをあらためて思い知らされる瞬間です。後は13巻において、岡野さんがもくろんだことの全てが明かされるのを待つのみです。期待しています。
面白さを取り戻しつつありおすすめ度
★★★★☆
すっかり難解になってしまった岡野陰陽師、久しぶりに新刊が出ました。
セオリーは難解ですが、一時期のギャグも回復して、面白みが戻りつつあります。
12巻で完結かと思ったら、完結は13巻だそうです。
評価は自然に導き出されると・・・。おすすめ度
★★★☆☆
確かに読者そっちのけで遠くへ行き過ぎた感はある・・・。
ただし、著者がおぼれすぎたり、道を違えたことを書いたり
しているのでいないのであれば、さほど差異は無いのかとも
思います。
何故なら元々原作あっての読み物(パロディー)なのだから。(汗)
素人が読んだ(見た)だけで解るのは危ないことだし、玄人が
この漫画を見ただけでバリバリ活用出来るなら尚危ない。
だからこそのフィクションであり逸脱なのだと思いたいです。
ただ・・・言葉の理からすれば、最初に宣誓していた(したのか?)
とおりの十二巻に修まらなかったのは、この作品(あるいは著者)に
とってあまり良くないことなのかも・・・?とは思います。
(評価の星が1つか2つ余分に減る程度のことではあるが・・・。)