映像の魔術師か、職人芸か、脅威の映像。おすすめ度
★★★★☆
主人公が足を骨折。覗き趣味に走るというマニアックな展開なのですが、
とにかく、一画面に濃密な情報を網羅することにこだわった異色作。
驚嘆したのは、ファースト・シーン!
ほとんど、コレ、どーやって撮影しているの?というような凄いカットの
オン・パレード。完成させた職人芸のも驚きです。
ヒッチコックの密室劇の傑作が『ロープ』なら、広角ワイドレンズ版が、
この『裏窓』というところでしょうか。(両作品とも甲乙つけがたい
傑作)巨大なアパート・セットで繰り広げられる出来事が、ほぼリアル・
タイムに体感できる、舞台のような実験的なマニアック・マンション的な
作品だと思います。スリリングな展開、ロマンス、そして近所への異常な
関心という皮肉のスパイスが効いた、近代娯楽作のヒット要素?をすべて
含んでいる映画史に残る傑作であることに違いありません。
他の作品に比べると・・・
おすすめ度 ★★★☆☆
ヒッチコックのファンである友人は、この『裏窓』を非常に高く評価しているのですが、個人的には他のヒッチコック作品に比べると「どうかなぁ~?」と悩んでしまう作品です。
確かに、思いこみから本物の殺人事件に遭遇してしまうという展開も良いと思いますし、映画全体のストーリーの運び方は「さすがヒッチコックだなぁ」と唸ってしまうのですが、この映画の状況設定それ自体が「う~ん」と考えてしまうのです。だいたい、マンション全体がほぼ一日中窓を開けっ放しにしているような状況というのが、ちょっとありえない感じがして白けてしまうのです。もちろん、緊張感でそんな白けた雰囲気を吹き飛ばしてくれるようなシーンもあるのですが、それでもやはり、『北北西に進路を取れ』や『ダイヤルMを回せ』などの他のヒッチコック映画に比べるといまいちのような気がします。
ただ、ヒロイン役として登場するグレース・ケリーは綺麗でしたね。特に、主役のジェフを演じるジェームズ・スチュアートとのキスシーンは良かったですね。欧米の映画の女優さんは、グイグイ来る感じの迫力あるキスシーンを演じる人が多いのですが、この女優さんは情熱的ではあるのですが、どこか物静かで可愛い感じのするキスシーンを演じていました。
そういう意味では、この映画の一番の見所はグレース・ケリーかもしれません。
概要
足を骨折し目下のところ車椅子生活を強いられているカメラマンのジェフ(ジェームズ・スチュアート)は、退屈しのぎにアパートの窓から望遠カメラでのぞき見をしていたために、いつしか殺人事件に巻き込まれてしまう。
コーネル・ウールリッチの短編小説を名匠アルフレッド・ヒッチコック監督が映画化した、今やサスペンス映画の代名詞といっても過言ではないほどの名作。主人公が身動きのとれない状態であることを逆手にとってのさまざまなスリルの趣向と演出が、素晴らしいまでに緊迫した効果を与えてくれている。たとえば彼がのぞき見している向かいのアパートの住人たちは、一切の台詞が主人公まで聞こえてこないので、どこかパントマイム的なユーモアが伴われるが、それが事件の発覚とともに無気味な体裁へと変貌していくうまさ。主人公の恋人役として登場のグレース・ケリーの美しさも特筆ものである。(的田也寸志)