正直、このアルバムを最初に聞いたときは聞いているのが苦痛だった。複雑怪奇な曲展開、とことんネガティヴなポールの詩。しかし、どれほどネガティヴでも、ここにはポールの魂のヴォーカル、チャドの七色ギターがある。聞けば聞くほど、その二つの要素が織り成す世界に引き込まれていく。特に「レガシィ」には感動。泣けます。このアルバムが「OKコンピューター」以前に出ていたら、もっと評価されていたはず。 SIX (ENHANCED) 関連情報
個人的に非常に思い入れのあるバンド。今更このページを見るような人はいないのかもしれませんが、書いてみようと思います。このバンドはとにかく商売が下手でした。現役だった当時ですら、SUEDEやTEARS FOR FEARS をフェイバリットとしていたためにシーンから浮いていた上、せっかく1stで全英1位を獲って会得したファンを「SIX」でふるい落とす始末。帳尻合わせのようにリリースした3rdも挽回どころか火に油を注ぐような結果となり、結果尻すぼみのような形でシーンから消えてしまいました。しかし実際にこのバンドに惹かれたファンにとっては、そんな不器用な部分すら愛らしく感じるのかもしれません。なぜならとにかく曲が良かったから。断言しますが、ブリットポップと呼ばれる渦中にあったバンドの中で(ちょっと遅いが)、最も音楽的な強度を保った楽曲をつくっていたのはおそらく彼らです。ニューロマンティック的な様式美感覚を開口を狭めることなく聴かせるポップセンスに落とし込んだ楽曲郡はとにかくクオリティが高く、リリースのしかたこそ難があったものの、アルバムを重ねてもそのセンスに翳りを見せることはありませんでした。正直いって今ではどのアルバムも中古で投げ売り状態でしょうが、隠れたレガシーといって差し支えありません。「この時代のバンドに興味が沸いたけど、今更ブラーとかは買う気しない」という人は是非このバンドを手にとって欲しい。今作は解散後にリリースされたいわばファンサービスのようなアルバムですが、彼らの普遍的な魅力というか、地力を感じるには一番の作品かもしれない。未完成品にもかかわらず異様なクオリティのCD1もいいが、B面集も素晴らしい。キラキラして「濃ゆい」にも関わらず、口当たりがよくてスルッといけてしまうのが彼らの魅力だが、37曲分お腹いっぱい味わえる。いずれかのアルバムを手にとって気に入った人にとっては本当に美味しい作品でしょう。是非聞いてね。結局のところ、セールスという要因にもっとも重要なのは、純粋な音楽的才能ではない、という当たり前の事実を思い知らされたのがこのバンドでした。ポール・ドレイパーという男は今を持って「才能がある」という文脈で語られることが多いですが、悲しいかな、その才能をリスナーの耳と照らし合わせ、小出しにするということができない人でした。しかし、だからこそ支持したい。音楽を愛し、音楽に愛されたポップソングを風化させないためにも。 Kleptomania 関連情報
1曲目からブリティッシュベターな人はちょっとした興奮を覚えるでしょう。空間の広がりを感じさせる、スペイシーな感覚がアルバム全体を包んでいます。 ところどころロックらしからぬ、ポップな曲が多少耳障りな感じがするひともいるでしょうが、メロディーのよさはそれを超えています。また、ところどころ、ラルクのHydeっぽいです。ヴォーカルが。 「アイム・イン・ザ・ワイルド・オープン・スペース」などは、シンプルなフレーズを何回も繰り返しているのですが、アンサンブルがどんどん広がってゆき、聞き手を飽きさせません。 古きよき90年代のブリティッシュ・ポップの教科書みたいです。洋楽の入門としても、激しくおすすめできます。 Attack of the Grey Lantern 関連情報