コダーイ:管弦楽曲全集
デッカからアンタル・ドラティの一連の貴重な録音がまとめて再販された。中でも、このドラティゆかりのハンガリーの作曲家ゾルタン・コダーイの管弦楽曲全集などは白眉ともいえる内容だ。
コダーイの音楽活動はなんといってもマジャール民謡とヨーロッパの伝統的音楽理論の融合にある。そしてその過程でうまれた数々の魅力的な楽曲がある。それはもちろんハンガリーの伝統的な音楽を知らなくても理解でき、楽しめるくらい完成度の高いものであるが、それでもハンガリー出身の指揮者と地元のオーケストラによる演奏は、聴いてみてなるほどと思うような節回しが楽しめ興味深い。「ガランタ舞曲」はジプシーの旋律をたくみに操っているし、「マロシュセーク舞曲」には農民の歌がある。また、初期の「夏の夕べ」などは印象派的な音彩を持っていることも面白い。こういった面白みはこのような全集でより端緒となる。「管弦楽のための協奏曲」や「ハンガリー民謡<孔雀>の主題による変奏曲」は西欧伝統音楽との高次な融合があると言われるが、ドラティの演奏は確信をもってその価値観にアプローチしていると言えるだろう。そして高名な舞台作品からの組曲「ハーリ・ヤーノシュ」も息高揚たる演奏となっている。
ドラティの演奏は上記のような楽曲の特徴を深く理解したものだが、それ以上に高度な音楽教育を受けた「洗練」も感じる。それゆえに解釈に普遍性が感じられ、多くのクラシックフアンに受け入れられるものとなっていると思う。