極北の怪異 (極北のナヌーク) [DVD]
冒頭、白人との物々交易所に向かうカヤック(カヌーのような小船)から、まずは漕ぎ手でありこのドキュメンタリー映画の主人公であるナヌーク、次いで彼の妻が降り、さらに次々と船底から彼の子供達(赤ん坊は裸!)、最後は飼い犬が降りてくるシーンがなんとも微笑ましく、この映画全体を貫く暖かいカメラの視線と監督のナヌーク一家への敬意を感じさせてくれます。
民族的には我々日本人と同じルーツなので、家族の顔が本当にアジア人と同じ。その若い母親が赤ん坊を背負いながら氷の大地に暮らす姿はなんとも感慨深い。
この一家の夏から冬までの暮らしを追った内容ですが、極北の極寒の地の暮らしにも関わらず悲壮感のようなものは微塵もなく、常に明るく時にユーモラスで力強く、そして何より生きる知恵の豊かな姿がとても良く、サイレント映画ならではの味わいです。
また、モノクロフィルムの映像が実に素晴らしいです。
氷の山、流氷、氷の大地の上を吹きぬける雪と風・・光と影が織り成す厳しい大自然と、そこを歩く小さな人間の姿が感動的です。
海岸に群れるセイウチを部族で狩るシーンは迫力満点、その一方で、獲ったばかりのアザラシのヒレで遊ぶ子供達の姿はとても可愛く、橇を引き、餌を奪い合う犬達の野性味溢れる姿も良いです。