モリッシー詩集
今までの国内盤の訳はよく意味がわからないことがよくあった。
しかし、このモリッシー詩集は元フォーク歌手でブコウスキーの翻訳
もしている中川五郎なので訳が意味不明なところがない。
スミス時代のモリッシーからソロ初期まで、通して読んでみると
モリッシーの価値観、人生観が浮かび上がってくる。
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ジョン・レノンの顔や形態をへたに真似した「伝記」だとつまらないと思ったけれど、普遍の青春映画として非常に出来がいい。おそらく、本当のジョンにはもっと「天才」の屈折や嫌味も強烈にあったんでしょうが、本作が描く「ジョン」は、どこにでもいそうな青年として描かれます。
レノンを演じるアーロン・ジョンソンは、もうひとつ締まりが感じられないのが難なのだけれど、髪をセットし、メガネをかけて、ギターを肩に背負い、街中を歩くショットはなかなか絵になっています。
本作は、普遍の青春映画でありますが、二人の母の愛に葛藤する少年を描いた人間ドラマでありつつ、悲劇的な過去に苛まれる姉妹のドラマであり、ロックンロールという夢に向かって仲間と共に突き進む友情のドラマでもあります。
特にユニークなのは、レノンへそれぞれ愛を注ぐふたりの母の物語が、姉妹の物語になっていくあたり。血が繋がっているがゆえの難しさが、女優の力もあって、迫力たっぷり。レノンをめぐる、奇妙な三角形がくっきり浮かび上がります。レノンが主人公の話であることをつい忘れそうになるくらい。
育ての母ミミは、ジョンを捨てた「自由奔放で保育能力にムラがある」妹のジュリアを許さない。ジョンは実母のジュリアに会いたいのだが、ミミはそれを禁じる。そこには、育ての親の愛と独占欲、他方では、自分が実母の権利を無視していることとの葛藤がある。だから、結局は会うことを許す。ミミの屈折を、クリスティン・スコット・トーマスが見事に演じています。
ジョンの実母を演じるアンヌ=マリー・ダフも上手い。ジョンを愛していないわけではないが、母親にはなれない女。天才的なノリの感覚があり、惚れっぽく、飽きやすい。
最後のシーンも泣かせます。バンドで成功し、ハンブルグに行くことになったジョンが、パスポートを取るために出生証明書が必要になる。ミミを訪ね、書類にサインをしてもらうとき、彼女は「どっちにサインするの?」と問う。書類には、「親」の欄と「保護者」の欄とがある。ジョンは答える、「両方にね」。実母のほうに傾斜して、ミミに距離を置きがちな描写が続いたあとなので、このシーンが効果を発揮します。実際、私はちょっとウルウルしてしまいました。
もちろん、青春映画としての部分も素晴らしい。初めて買ったギターをベッドに立てかけて誇らしげに眺めるジョンの姿、表情。そして、ギターを手にしたことにより急に態度がデカくなるジョン。初めてのステージを前にして超テンパってる様子や、ポール・マッカートニーとの出会いで「お前なかなかヤルらしーけど、どんなもんよ?」みたいな態度のジョン。でもポールの腕前を見せられて「コイツ俺より上手いじゃん」とビビる。(笑) 少年達の、ちょっと強がった友情の深めあいが最高でした。
リングリーダー・オブ・ザ・トーメンターズ
プロデューサーにトニー・ヴィスコンティを迎え、前作「You are the Quarry」の勢いをそのまま受け継いだ2006年作。
前作もそうだったが、ロックアルバムを想像させない奇抜なジャケットに、スミス時代からのモリシッシーを知らないリスナーも
増えたためか、ある中古屋ではクラシックのコーナーに置かれていたりした。
しかし、実際内容の方はこれ以上ないほどに成熟したロックアルバムとなっており、前作で一気にポテンシャルを取り戻した
モリッシーの絶好調ぶりが持続された素晴らしいアルバム内容となっている。
それは音楽業界の激しさと優しさ、酸い甘いも体験として知り尽くした男が、ある意味開き直って、自分自身のために生み出した
サウンドであり、今出せる最高のパフォーマンスを余すところなく出し切った清々しさを感じ取ることができる。
ジャケットの風貌は、ますます志茂田景樹風になっているのだが、音楽はますます研ぎ澄まされたシンプルな男のロックへと向かっている。