Akoustic Band
テクニックで言えばハービー・ハンコックもマッコイ・タイナーもキース・ジャレットでさえかなわないほどチック・コリアのピアノは凄い。それなのにこのアルバムはどこか走りすぎてテクニックを誇示したようなところがあるように思える。選曲もソー・イン・ラヴ、枯葉、いつか王子様が、といったスタンダードで申し分ないのに上滑りしていて、エモーションが伝わってこないのだ。チック・コリアのアコースティック・ピアノによるスタンダードがどうしたことなのだろう。思うに「どうだうまいだろう」というチックの衒いのようなにおいがこのアルバム全体に漂うのではないか。スタンダードに関して言えば、キース・ジャレットに先手を打たれ少しあせったのではないかというところか。ただし彼のオリジナル「スペイン」だけはいつ聴いてもスカッとする。
スタンダーズ・アンド・モア(紙ジャケット仕様)
いやはや、すごいテクニックの人たちがさらっと、こんなに難しいことをやってのける。すごく難しいことをやっているのに、難しいことをやっているように全く聞こえない。クルマにたとえると、ベンツに乗っているような感じかな。快適なのに、快適なだけに流れない。きちっと残るものがある。素晴らしい。