俊哉は才色兼備で資産もあり周りから見たら満たされてると思う人物なのに、実際は内面的に空虚で深い孤独を抱えて人生を送ってる。そんな俊哉と異母兄弟の匡紀との愛憎の絡み具合が秀逸です。
覚悟してたのにおすすめ度
★★★★★
前作「地球は君で回ってる」で泣かされたので、覚悟して読み始めたのに、やっぱり泣かされてしまいました。
本編匡一&七瀬編は「嫉妬」がテーマなのかな?でも愛情の再確認、みたいで結局は幸せそうでほのぼのします。
表題作「最後から一番目の恋」は匡一の父俊哉と異母兄匡紀の物語です。
今まで他者から語られたイメージしかなかった「高槻俊哉」という人間に血肉がつき感情を持って、ここに実体化したような気分でした。
どうしてこの男が高槻俊哉なんだろう?もしくは何で高槻俊哉がこんな男なんだろう?と、読みながら何度も思ってしまいました。
頭も顔もよくて才能も金もあって、生きていても誰一人幸せにできず、死んで尚匡一を苦しめ続けている男。でも実際には何も持たず、心に大きな空虚を抱えたままたった一人の人を求め続けている孤独な男。他の誰にも残酷なのに、好きな相手は傷つける事を怖れ、ただ手をつないでくれる事だけを望む男。
何故こんな男が高槻俊哉なのか……高槻俊哉がこんなに寂しい男でなければ、憎む事は簡単だったのに。想いも孤独も切実過ぎて、彼の為に泣けても憎む事なんかできなくなってしまいます。
そして前作でおだやかでやさしそうなイメージだった匡紀も、血肉をつけてみれば外見よりずっと愛憎を抱えた人でした。俊哉を憎みながら惹きつけられてしまう。「高槻俊哉」に嫉妬しても憎んでも最後には彼の寂しさに惹かれてしまう優しい人。俊哉がたった一人望んで、最後に「死」に持ってかれてしまった。
父親達の孤独を感じながら、父親と同じく顔も頭もよく才能も金もありながら、同じように心に大きな空虚をもっていた匡一が、七瀬に出会えた幸運と幸福に思わず感謝せずにはいられませんでした。
素晴らしい出来栄え
おすすめ度 ★★★★★
これが発売されるのを心待ちにしていました
。値段の割には上出来。
買って良かったと思います。