レイディオおすすめ度
★★★★☆
久々の単行本。
地方FM局のDJのラジオパーソナリティとしての側面と、またしてもまたしてものイトヤマ的造形な対人バリア張りまくりのそのパラレル。
いいねえ、ベリークールな地方都市小説。特に女医の沢音さんはかっこいい。男気あふれていいます。
最近低調だったけど、これは非常によくまとまっていて、いい小説。
偏愛ゆえに主観的にしか書けないが…
おすすめ度 ★★★★☆
「ダーティ・ワーク」から一年半…
新刊を待ち詫びていました。
ああ、長かった、やっと出た εミ(ο_ _)ο
私は絲山秋子という作家その「ひと」自体を、
既にある意味、客体視しえないほど「偏愛」してしまっているため、
最近、人とこの人の作品について話すことに
非常な困難を覚えるようになってしまっている。
ので、本当はレビューなんて「書きづれぇことこの上なし」なのだけれど。
本書は表題作(中編)のほかに短編が1編、
計2編が収録された一冊。
読んでいて一番印象に残ったのは、
(表題作の主人公がまたしても「おまえは私か」であった点は別としても)
「美丈夫」というネーミングのセンスであった。
パートナーが「化石氏」だの「浮世氏」だの「ナマズ氏」だの、
という呼び方は実生活で目にしたことがあるが(うちひとつは私自身の使っていた呼称)、「美丈夫」という呼称も良いなぁ。
と変なところで感心してしまった。
作品について言えば…
ああ、やっぱり主観的にしか語れない!!!
特にこのテーマって、自分にとっては生(ナマ)すぎて、
レビューなんか書けない…。
当たり障りのないところに言及しておけば、
最初から最後まで三人称で語られ、
一貫して不在であり続ける(その不在によってこそ語り・語られている)
この美丈夫氏の位置づけが非常にうまい。
まぁこの人の文章の巧さは、例の如くという感じだが。
表題作は、痛々しくてギスギスしていて、
でもそれがちょっとだけ(あくまでもちょっとだけ!)ほぐれてゆく過程が
描かれている。
切なくて優しいお話、である。
で、実は私はもう一編の短編もとても好きなのだが、
私もナカノさんと同じく
自転車に乗れないけれど乗れるようになりたくて、
でも『乗って帰れない』のが恥ずかしいから
買いに行くのを逡巡している
…という人間なので、
そういう地に足の着いたレベルですさまじく共感した。
というか、笑った。
この短編の方は、
他の作品でも見られる絲山秋子の
「男らしいほどに潔い女・らしさ」が溢れていて、好きなのだ。
『オトコなんて体が全てなのだ。オンナは脳味噌。』
こういうことを言うこの人は、
ある意味オンナじゃないと思うのだ(共感を込めて)。
いや、視点はオンナなのだが、
それを捌く手際が、限りなく「オトコらしい」のだ、
この人はいつも。
うーん、全くレビューになってないね、我ながら。
まぁいいや。
最後に、この一冊の中で一番好きだったフレーズ:
『なんにせよ、ふざけたオトナになりました。』