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内容的には、クラシック界の(特に、バイオリン界の)楽器に対する演奏家から見ての評価とか価値の危うさが垣間見れる作品であり、非常に面白い作品であると言えます。特にバイオリンなどの不可解な価値の根幹にあるのは、楽器演奏者自身の盲目的とも言える信仰心であり、また、演奏そのものより、楽器や奏者のネームバリューが物をいってるという、クラシック界の暗部を表現してます。のだめカンタービレがクラシック界の表と明るさを表すものとしたら、マエストロは裏と深層を表す作品といって良いでしょう。伊藤裕子の冷徹なまでの現実を見据えた演技と観月ありさの一流とはいえない演奏家としての葛藤がよく表されており、出来のいい作品といえます。クラシック界の奥底をのぞかせた、最初の作品ではないでしょうか?
クラシックが好きな方、嫌いな方、必見のDVDです。
マエストロ [DVD] 関連情報
水晶デバイスメーカの藤岡という男を主人公として、世界最先端の水晶発振器用の(原石)水晶を手に入れるために、インドで悪戦苦闘する経緯を詳細に綴った一種の企業小説。ただし、作者としては、日本とは全く異なるインドの文化、風俗、慣習、宗教、倫理観、民族の多様性、そして経済発展の裏にある今なお根付くカースト制度とそれに基づく極端な貧富の差(勿論、貧困層が大多数を占める)、女性差別、テロ・誘拐の横行といったものを描く事を主眼としている様である。藤岡はこれらと闘う必要があり、通常の企業小説と言うよりは、"世界観のぶつかり合い"を描いた作品と言った方が妥当だろう。
また、藤岡が求める超高純度の原石は奥深い森林中の部族の村にあり、そこで繰り広げられる夢幻的・原初的世界の圧倒的描写は作者の真骨頂であろう。また、女性あるいは部族の解放を支援するNGOのイギリス人職員が登場するが、藤岡、NGO職員及び当の部族民間に微妙な思惑の相違が存在している事を簡潔に描写している辺りも鋭いと思った。欧米、日本及びインドにおける"人道的"の概念が根本的に異なる事を浮き彫りにしている。更に、インドの民衆が貧困や性的暴力や"命の安さ"を<諦観>の念で受け止めている様も良く伝わって来た。それが、藤岡が落とした金で部族民が次第に強欲になって行くという過程はまさに皮肉そのもので、これも本作のテーマの1つ(経済発展と自然・環境保護とのバランス)なのだと思う。
もう一人の主要登場人物は藤岡の命の恩人でもあるロサという名前の先住民の少女である。ロサは「生き神様」だった経験を持つし、人間爆弾と化した経験も持つし、性的暴力の経験も持つし、何より、卑弥呼を想わせる「女王」としての風格、並外れた智力、そして様々な呪術的能力を持つ。不屈の闘志を持つロサは自由や上述の自然・環境保護の象徴でもある。表題の「インドクリスタル」は文字通り、「インドでの水晶採取」とも取れるが、ロサを「女神」と見立て、「インドにおける「女神」」とも取れる。"混沌"としたインドを舞台に、多彩なエッセンスを織り込んだ力作だと思った。
インドクリスタル 関連情報
介護のリアルな場面はあまりないですが、自分の将来にこのようなことが起こりうると
ひしひしと感じさせられ、リアルに迫ってくる迫力がありました。
介護についての興味も広がりましたし、「女たちのジハード」くらいしか読んだことが
なかった篠田さんの他の著作もいくつか読んでみました。
かつてより確実に筆力があがっているという率直な印象で、今後を注目したい
作家さんのひとりになりました。
長女たち 関連情報