MARI
ラテンポップスの歌手として名を知られた人物がモノした小説、という事で12年前の刊行時にも話題を呼んでいた。 当時は点検しただけだったが、今になって時間もあったので読み込んでみた。
今の時代は、テレビの中でのエンターテイメントまがいのよそごととしてしか、国際的な事象も感じられなくなった人、無知を満喫、家畜まがいの人間ばかりになった時代ではある。
だから、少しでもまともな人間性がある人なら、一読なさるべきだろう。大方の予見では、著者の経歴肩書きでタレントの余技位に甘く見る向きもあるのだろうが、著者の経歴だからこそ、この知性だからこそ成し得た、恐るべき価値の書物なのだと申し上げておく。
著者が注目され始めたのは、ニフティーでのPANDRA-REPORT(今も著者サイトから読めるので一読を)で、優れた感性と読者を引付ける強いカリスマに、稼ぎの匂いを感じた編集者が口説き倒し乗せまくって、これが出たのだろう。
最近になって、この国に巣食って社会を腐らせている法曹界の支配層に、質問状の形で楔を打ち込んでいる一団の代表でもあるのが、著者の一面でもある。
原稿用紙1050枚もの書き下ろしで、「小説」と銘打ってあるが、明快に整頓された歴史的事実に、小説の構成を持ち込んだものと言って良い。小説的価値は一流の水準であろう。
転変暇もない国際情勢の真実に繋がる、価値の輝く事実をこれだけ見事に、見える代物にするのは、特別な感受性と知性とセンスが不可欠だ。
著者は、それを持ち合わせ駆使出来る逸材。
この国に必要なのは、それだけの解析力と明快な視野を保った人間に拠るデーターの開示なのだが。
・・・飯の種にしてオモチャっぽい味付けをしてやらなければ世間に出す事も叶わぬ。というこの国の文化文明の惨状では、という嘆息も添えて、お薦めしよう。<(神社にある泉湧寺で保管されたノウハウと合わされば、日本人の知性は息を吹き返すが・・・)←この部分非一般>
優れて明晰に切り抜かれた事実の欠片(ピース)が、ジグソーパズルの様に嵌め合わされている。
その事実のいくつかは時代を超えて、過去の日本の過ちの事実迄にも繋がった貴重な欠片でもあるのだが。
全てを緊密にして読み解けるには、それなりの資料の読み込みや学習が必要だろう。
10回程、勉強を挟みながら、読み返してみれば、読み取れる世界が違ってくる程に、面白く優れた著作に仕上がっている。
ラテンに学ぶ幸せな生き方 (講談社プラスアルファ新書)
この本の帯を最初に見たとき、格差社会を肯定しているみたいでちょっと引いたが、読んでみるとかなり違う内容だった。
要するに、格差社会や貧困の中でも、人間的な繋がりを保つことによって、建設的に生きているラテンアメリカの人々の現状と、一方で、自殺率の異常に高い日本の状況を、その目からウロコ的な原因を呈示し、(すぐに実現可能かどうかは別として)ラテン的見地からの提言をしている。
自分自身、とても閉塞感を感じる日々だったので、とても参考になったし、日本人にとってぜひ読むべき一冊だと思う。
検察崩壊 失われた正義
本の概要はほかのレヴューにまかせよう。対談者の中でも特に、検察の現場のプロでありながら、被告人という立場になってしまった大坪氏の発言から引用する:
「自分の捜査官としての経験から言わせていただくと、先ほども指摘したように、田代検事の捜査報告書と隠しどりされた録音の反訳書の二つだけを疎明資料として出せば、田代検事の逮捕状はすぐにでもとれるし、公判に持ち込まれたとしても、この二つで田代検事がどのように弁明しようが、私は否認のままで有罪をとれると思います。それほど、これは明白な事件です。」
「しかし、被疑者が発言した言葉や内容について、ジェスチャーや身振りから推測して、勝手に言葉を補って、Aまでしか言ってないのに、ABCDEFまで言いましたというような膨らませ方をして、当事者の発言として書く、という報告書は絶対あってはならないことです。」
「この〔注〕を見たときに、愕然としました。たとえ、今回の事件を不起訴という形でまとめたいという検察の組織としての論理があったとしても、本来全国の検察に対して捜査のあり方を指導すべき最高検が注書きで、あたかも身振り手振りを含めて相手の意を忖度して、こういうことを言ったんだ、と実際の発言があったように勝手に膨らませて報告書を書いてもよいと言うことを認めるというのは考えられないことです。」
「最高検がそういうことを容認するのであれば、今後は、一言しか言ってないけど、捜査官がジェスチャーからそう忖度すれば、いろいろしゃべったことにして、5ページくらいの報告書にしてもいいということになる。これが指針だとしたら、論外です。上層部は、いかに今回の件を何とか丸く収めたいからと言っても、こんな報告書をよく出したなと思いますね。」
捜査報告書はフィクションで構わないという「指針」が「全国の検察に対して捜査のあり方を指導すべき最高検」によって出された。つまり検察は「終わっている」ということである。
ラテン女のタフで優雅な生き方―自分のスタイルを求めて
文章としては退屈でした。世代的なものか,思想信条が先行してるように見える。
ただ現地の生活の息づかいは感じられた。情報が少なかった時代は貴重な情報として即買いしたが
まず書店で立ち読みしてから買う事を勧めます。