開発援助がつくる社会生活―現場からのプロジェクト診断
本書の最大の特徴と貢献は以下の3点で「開発援助の見方を変えている」点であると思う;
1)援助する/される側という立場を超え、開発援助の現場を「途上国でプロジェクトが行われている場所」だけでなく開発援助を「複数の社会をまたがる動態的なプロセス」と捉えなおしていること、
2)「開発援助という現象を単眼的(例えば、経済学者という立場から開発プロジェクトを分析する)でなく、複眼的(学融合的なスタンスをとり、観察者としてだけでなく、広義の当事者としての視座)と捉えなおしていること
3)このように援助を「複雑系」として理解することを通じ、援助の設計不可能性を指摘しそれに向き合う方法として、従来の設計主義が強い「経済学的アプローチ」に加え、設計できない要素(援助に関る社会が持つ文脈、人々の関りや開発行為がもたらす偶発的な影響など)に向き合う「人類学的アプローチ」をバランスよく適用することを提言していること。
唯一残念な点は、本書の結論部分で紹介されている代替開発援助アプローチである「人類学的アプローチとは何か」についての記述が薄い点である。今後そのアプローチが何かを明示していく上で、学習理論における「知識伝達型(上流から下流に「よりよい知識」を移す方法)」と「知識創造型(知識そのものを対話や試行錯誤により作り出す方法)」という分析枠を適応すれば、議論がより深化するように思えた。
本書を常に自己省察的に、「オトナ(Decent)な態度」で開発援助を理解したい、関りたいというすべての人に推薦したい。
武満 徹:地平線のドーリア(1966 小林研一郎指揮)//風の馬よりI, II(1961初演)/ノヴェンバー・ステップス(1967 岩城宏之指揮)/ピアニストのためのコロナ(1962 松谷翠/高橋アキ) 他
音源としては価値があるが、このシリーズ4枚に共通して言えるのは、解説がダメ。初演者の情報など、当然のことが欠落している。大方、無能な音楽評論家に執筆を依頼したのだろうが、Wiki以下のレベルの解説である。演奏は素晴らしいからこそ残念だ。「このようなCDを後世に残す使命を感じた」などど大風呂敷を広げるのなら、行間の隙間のある解説など止めて、できる限りの詳細の解説が欲しかった。1000円の安いナクソスとは違うのだから。