現在の印パの状況を泉下のガンジーは悲しんでいることでしょうおすすめ度
★★★★☆
リチャード・アッテンボローらしいポリティカルコレクトネスの公式に美しく当てはまる三時間強の歴史劇。「文部省推薦」というレビュアーさんの言葉に頷きました。
タイトルそのままに「ガンジー」の魅力を描く映画なのだと思えば大変にウェルメイドな作品。背景となる歴史のうねりや関係者の利害の錯綜が軽く感じられるのが惜しいところですが、それは仕方がない。キングスレーの憑依演技が見ものですし、脇を固める俳優たちが凄い。チョイ役にダニエル・デイ・ルイスとナイジェル・ホーソーンが登場し、ジョン・ギールガットが映画全体に貫禄のオーラを与えてくれます。加えてインドの自然が大変に魅力的。
個人的に、British Rajの元で育ったインド人エリートというのがよく考えれば不思議な人たちだということが映像世界を通してよく分かりました。独立運動家の多くが英国で教育を受けた弁護士というのはどんな意味を持つのでしょう。そして全員がこの上なく華麗な英語を操ります。ジンナーに至っては完璧な英国紳士です。「彼らは果たして『インド人』なのか?」とさえ。インド人の英国に対する愛憎というのはもしかしたら日本人には捕捉出来ない世界なのかもしれません。単純に「大英帝国=悪」という公式では括れないものを感じます。
特典映像のキングスレーインタビューの翻訳にちょっとクレームをば。「ガンジーが女性にとって魅力のある存在だったという事実を受け入れられない人がいる。偉業をなす男とは魅力的なものです(They couldn't accept the fact women found him enormously compelling. All powerful men are compelling!)」というキングスレーの言葉が、何故に「彼らは女性が持つ影響力を認めたくないのだろう。偉人も女性に弱い」などという真っ赤なウソの日本語になってしまうのか。字数制限の中で意味を収めるご苦労は分かりますが、これだけ外されると故意の誤訳かしらと勘繰ってしまひます。
ガンジーの軌跡をたどるおすすめ度
★★★★★
ギャング映画や西部劇をよろこんでいる私としては、伝記物というと、立派ではあるけれどおもしろみの少ないストーリーを連想する。リンカーン、野口英世、キュリー夫人・・・。本作品もガンジーの偉大な人生を描いた傑出した大作で、ガンジーに出会ったような気持ちになるけれど、好きな映画にはなりそうにない。
とはいえ、全編にわたって緊張感をたもちつつ、ていねいに撮っていて、申し分がない。ガンジー役のベン・キングスレーは、風貌も仕草もぴったりで、とくに眼の表情は柔和でするどい。本作の成功は無名の彼を発掘したことにあるだろう。ラヴィ・シャンカールの音楽もすばらしい。撮影も大掛かりだ。国葬の場面は目の届く限りのエキストラで埋め尽くされている。
この映画を見てもうひとつ思うことがある。国内では市場原理主義の名の下の金権支配と権力に追随することに慣れた国民。世界では、暴力に対する暴力の応酬、覇道をまい進する大国の存在等々。紛争の多発はガンジーの時代と変わらない現実がある。
差別と暴力は絶え間なく憎しみを生む おすすめ度
★★★★☆
差別ほど軽率で愚かな行為は無い。ましてやそこに暴力が伴えば、もはや人間性などは介在するわけもない。差別と暴力は、する側にとっては楽だ。やっている本人だけがうまい汁を味わえる特徴を持つ。
楽すぎるだけあって差別や暴力を遂行する側を改心させるのには多大な努力と犠牲を伴う。ありがちな過ちは暴力に暴力で対抗すること。
「殴ったら殴り返す」
暴力は一番簡単な方法だが、それはあらたな憎悪を有無に過ぎず、何の解決もできないばかりか、「誰が悪いか」をとう原初説に陥るだけだ。だから、かなしいかな自分の尻ぬぐいもできない奴らのために、人類は多数の人名を犠牲にしてきた。
ガンジーは、打ちのめされた人々と共に無暴力という「答え」を突きつけた。強い意志という力を得たガンジーは、人間そのものと戦いながら、多くの支持者を得ていく。
この映画は多難なガンジーの存在とその歴史について理解することができるものだ。ただガンジーの思考や行動は思った以上に奥が深い。そういう意味では映画としての見所は少なく、歴史の教科書のような印象をうけるのは否めない。
出来は非常に良いです。
おすすめ度 ★★★★★
出来は非常に良いです。これを知らずして新しい時代のエンターテイメントは語れません。
感動やドキドキ感を手元に置いて、私同様に何時でも手に取って思い返して頂きたいと願います。