女性版『もてない男』おすすめ度
★★★★★
基本的には藤野氏の語る「ブスゆえの悩み、不満、経験談」を西氏が解読していく、というような感じです。
陶智子『不美人論』よりもくだけた感じで、緒方貞子、田中真紀子、林真理子など、有名人を挙げてくれているので分かりやすかったです。
「藤野 (略)自分にとって不利で苦しいゲームにまきこまれていると、ほんとうに欲しいものや、ゲームの目的がわからなくなって、被害者意識におちいって元気を失っちゃうんだよね。」
このあたりは恋愛教の集団洗脳を指摘した『もてない男』とも共通しているといえますが、
同書でも明確には書かれていなかった、「まきこまれて」というところは非常に重要なポイントだと思います。
とにかく『もてない男』以上にブスがブスゆえの悩みを語るのは大変な勇気とエネルギーがいると思うので、
それだけをとっても非常に価値ある一冊です。
ひとつ文句を言いたいのは、著者名は2名ですが、
実際の本文には「編集者」というのがかなりの箇所において登場します。
しかもあとがきによると「編集者」は藤野サイドと西サイドの二名いるとか。
巻末にはクレジットがありますが、本文中にも名前を出してほしいですね。
鼎談(四者対談?)といっていいほどの分量ですから。
結構重要な問題を提起しているおすすめ度
★★★★★
「不美人論」と銘打っているが、これは広義に「生き方本」としても読める。世の中の諸問題には、システムを変えるべきものと、自分を変えてゆかなくてはならないものとの2種類があって、多くの場合この二つは混同されている。例えば、税制や年金制度が庶民に負担を強いるだけのものなら、これはシステム自体を変える必要がある。しかし、美醜の判断や「育ち」など制度的なものの枠外にあるものは、世の中のシステム自体を変革しようとしても意味はない。私は男だが、物心付いた頃から美人や可愛い女性が好きで、「どうしてお前はそうなんだ」と非難されても、私にはどうすることもできないし、フェミニストがいくらこれを「男の陰謀だ」と叫んでも変わることはないだろう。それに女だって「ブ男」は嫌いでしょうに。一番抱かれたくない男なんていうランキングなんかもあるじゃないか。これ、女が男を客体として値踏みしているわけだ。だから、不幸にして(?)不美人(ブ男)に、或いは余り恵まれていない家庭に生まれたような場合、これを乗り越えるのはもう本人が自分の意識を変革して、世の中に立ち向かっていくしかないわけだ。私は、自分が現今必ずしも公にあって十分な社会的承認を得ているとは思わないが、それで世の中を恨んでどうなるものでもなく、結局自分を前向きに持ってゆくしかない。本書に出てくる面々は、この「福徳一致のアポリア」という難問に対して、彼らなりの考えをかなり赤裸々に出していると思う。結局「諦めないで前向きに歩こうよって」ってところがオチだが、それ以上のことが言えるわけがない。
編集者のコメントが面白すぎますおすすめ度
★★★★☆
「友子の場合」など、一風変ったギャグのセンスを持つ漫画家・藤野美奈子と
わかりやすく軽妙な哲学をとく西研が、やはり女性は美人の方が得をする、というテーマで対談をしています。
漫画を離れても藤野美奈子の言葉の刃は切れ味がよくて
「ブスは都会の風景に合わないので男は連れ歩かないのでは」
「自分のことを、ただのブスじゃないし、ひょっとしたらかなりいけてるかもと、間違った自己評価をしているかも」
ファンならずとも、唇の端が上がってしまうような(それでいてうなずいてしまうような)笑いが浮かぶのは必至です。
さらりと読むと見落としがちですが、きちんと読んでいると、
いろいろな世の中の矛盾が見えてきて
タイトルに反し嫌みのない本だと思います。
西研もエリート(東大卒)の意識の勘違いを中心に、笑えるエピソードをたくさん挙げていますが
一番面白かったのは、ところどころに顔を出す編集者でした。
さりげなく
「ブスはいつも萎縮している」というコメントは苦笑せざるをえません。