ポル・ポト 死の監獄S21―クメール・ルージュと大量虐殺
本書はクメール・ルージュの狂気の実態を詳細に分析していき,
やがてそれがいつでもどこでも起こりうることだと結論付ける.
自分を正義の味方と信じる人間は常に何かを悪と決めつけ,
それを倒すことに血道を上げる内に多くの人間が踏みつけられていく.
そんな人間が集団を作り,国家の実権を握れば,
このような地獄絵図はいつでも繰り返される.
著者は確かにクメール・ルージュ政権下で取材したわけではない.
だがだからこそ冷静に物が言えるのだ.
いくら戦火の中取材したと言っても,とりあえずアメリカのせいにして一件落着するあのジャーナリストやかのジャーナリストなんかよりはよっぽど信頼が置けると言える.
南米ポトシ銀山―スペイン帝国を支えた“打出の小槌” (中公新書)
スペイン人による南米支配は,ピサロのインカ征服に始まる.エルドラドを目指してたどり着いたインカでは金銀銅をはじめとする金属の地下資源の宝庫であった.ポトシ銀山はその代表であり,ミタ労働と呼ばれる強制労働により採掘がおこなわれた.さらに,水銀アマルガム法による大量の水銀使用は,インディオを死に至らしめた.スペインおよびヨーロッパ諸国はこうした金銀の採掘により多大の利益を得た反面,インディオは深刻な絶滅に至った.本書は客観的な税の数値から銀の産出量と水銀の使用量を示した.その驚くべき使用量は,15世紀から始まる植民支配によるインディオの絶滅を納得させるに十分である.軍による虐殺のみならず,強制労働と水銀中毒は南米社会を激変させた重要な因子であることを本書は知らしめている.